大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第玖拾参話

 新年祝賀会の騒動は、邸宅が広いことも幸いして、当事者以外に知られることはなかった。当の本人はまったく反省の色がなく、川上の追及をのらりくらりとかわす。また、松の内だけにまだまだ訪ねてくる人は多く、腰を据えて大城を叱る暇もない。

 あれから数日が過ぎて、川上はようやく別棟の私室へ、大城を引っぱるようにして連れていった。いまのかれには、普段の温厚実直、徳の篤い人物という顔はなく、ニセのころの、我が侭の限りを尽くした、“ボッケモン”そのものを川上にみせている。ふてぶてしいといった態度で、上座におさまった。

 惟之と和胤には深い絆があるのだと、それには触れてならないと、それでも川上は滔々と説きつづけるが、まったく動じる様子がない。

 「おいの懐いへ来て、ふらふらしちょって、襲ってくれちゆうとるのと同じじゃ。隙を見せちょるほうが悪い」

 「兄さぁ…そいは―」

 「そげん大切ちゆうのじゃったら、そいなりに然るべき手段を講じるべきじゃろ」

 「確かに、杉サンはちっと…無防備じゃったかもしれん。じゃっどん、論点はそこではありもさん」

 「知たん。こいに懲りんじ、栗鼠どんが隙だらけにしちょるようじゃったら、遠慮なく頂くまで。そんように忠告しやんせ」

 それでも、ふたりを庇っている川上の意志を汲んだらしい、一応“最後通告”めいたことを言って寄こす。兄同然の大城からこの剣幕で言われては、さすがの川上もことばを返せなかった。

 早速翌日になって、“ボッケモンの兄さぁ”を宥めきれなかったことを詫びに、川上は杉邸を訪ねたが、その大城とのやりとりをよく聞いてみれば、惟之も和胤も、軽率な振る舞いはあっただけに、耳が痛かった。

 「おはんな、元々可愛がられる性質ちゆうこつ、忘れたらいけもはん。山口クンも、杉サンがどげんお人か…言を俟たんでも解っどが」

 よくよく川上から忠告されて、改めて“索敵機”をうごかしてみると、何も大城からだけでなく大同小異、目を付けられている人物がたしかに思いあたる。それも一人やふたりではない。

 そら、ご覧なさい、と言わんばかりの顔でいる川上と、名を出さぬにしろ、危険人物を指折り数えている惟之とを交互に見比べて、和胤は天井をあおいだ。


 新年の休暇があけて、惟之と和胤は軍務へ立ち戻り、再び参謀本部での勤務に明け暮れる日々が訪れた。

 軍務上は差し支えがあってはならない。公的な部分には一切影響させることはなかったが、私的に警戒すべき事項が増え、しかも根本的に不器用なふたりだけに、平素通り振る舞うことに慣れるまで、いらぬ喧嘩に発展することもよくあった。

 そんな日々に入って、最大の“戦火”があがった。前もって言っておくが、火蓋を切った喧嘩の理由は、大したことではない。

 惟之の思考は公務が中心で、それは以前から承知していることだった。だが、私的な時間―和胤は自分が蔑ろにされているように思えて、嫌味めいたことを言った、そのひと言が発端である。

 和胤も忙しさにも圧されていたから、心に余裕がなく、つい、きついことばになってしまうし、惟之は売りことばに買いことばで、最大の短所である、癇癪玉を炸裂させてしまうしで、収拾がつかぬ有様になってしまった。

 元をただせば、温かな空間を守ろうとしているだけなのに、と、互いに心の隅ではわかっているだけに、始末が悪かった。

 今はちょうど、春に行われる艦観式と閲兵式がかさなり、陸海軍の合同演習を行おうという、多忙な時期にあたっていて、海軍の軍令部長、陸軍の参謀総長は責任者となっている。それをよいことに、あとは次長に任せて、ひと月ばかり先であったが九州の小倉へ、演習責任者ということで惟之は赴任していった。こう言えばきこえはいいが、要するに“家出”をしてきてしまったのだ。

 和胤には言づてどころか、書き置きすらしていない。

 最低限の手荷物だけで、いつかのように風の如く、ふいっとすがたを消した。惟之も惟之で、歳甲斐もなく家出をしたことで、ますます引っ込みがつかなくなった。よくある、犬も喰わぬ喧嘩、であるが、当人には深刻な問題なのだ。

 小倉へ着くまえに、ふた晩ほど名湯とうたわれる温泉につかりに寄り、あいつの顔を見んで済む、清々したわい、などと言いつつ腹立ちまぎれに、派手な芸妓あそびをしてから別府を発った。これには同行した副官も目をまるくしたが、いざ小倉へ着くと、普段と変わらぬ勤勉ぶりで、大演習までの日々をほとんど書類や視察に埋もれて過ごした。

 もういっそ、このまま忘れてしまえたらいいのに、とさえおもいつつ、やはりどこかで和胤がどうしているか、考えていて、また腹が立つ。素直になれず、未だに電話のひとつも掛けていない。向こうからも音沙汰がないということは、怒りがおさまっていないのだろう。


 前触れもなく、大城が惟之を訪ねてきたのは、半月を小倉で過ごしたころだった。もうそろそろ、帝都から先任参謀が赴任してくる時期にさしかかる、多忙の頂点であった。

 大城が陸軍の要職から離れたといっても、大演習には元帥も列席することになっており、ここへ来ることは至極当然であった。二月に勅命がおりて、春になる前に宮中御付武官、いまは元老となった身である。その挨拶まわりに、当然、参謀総長である惟之のもとにも訪ねてくる。

 ふたりきりで大城と対峙したが、かれから向けられるまなざしは、普段と変わらない。型どおりの挨拶を済ませ、よそよそしい空気で隔ててしまっている。もうあのことは、和胤のおかげでかなり癒されているが、それでも大城と顔を合わせると、胸が痛みに疼く。

 「―杉サン、あん日のこつ、おいは謝るつもりはなか」

 辞する間際に、大城は扉の前で振り向いて言った。いつものように、くちの端に笑みを溜めて、ゆったりとした姿勢をくずしていない。まだ諦めていないのか、ちらりと視線で探られて、惟之は背にうそ寒いものを感じるとともに、微かな警戒を抱く。

 卓を挟んだ向こう側で佇んで見送る惟之が、何ともいえぬ複雑な表情をしているのを認め、大城は内心でほくそ笑む。こうして見ていても、そこはかとない“香”を醸しているが、自覚しているのだろう、さすがに以前のような隙はみせていない。

 「そいでは、失礼しますせ」

 たっぷりと、惟之の立ちすがたを眺めわたしてから、大城は出て行った。握りしめた掌に、いやな汗をかいている。人と対峙してこんな気持ちになるのは、生まれて初めてかもしれなかった。胸にわだかまるものを抱えているのが、堪らなく嫌だった。

 起居している官舎へ戻ってからも、不機嫌というより、考えこんで、押し黙ったままでいる。大城が現れたことで、あたまから冷や水を浴びせられたも同然で、いまさらひとつひとつ、考え直すまでもない。誰が居てこその、自分なのか…。

 しかも大したことのない理由で、和胤に対してここまで意地を張ってしまったことを、惟之はいまさらながらに後悔した。
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| 変わらぬ青空のしたで・91―100話 | 23:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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