大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  変わらぬ青空のしたで・第玖拾壱話

 その頃、川上と和胤は、ささやかな書道の会をお開きにして、ちょうど書道具を片付けていた。渡り廊下を挟んだ向こうの茶室から、確かに“和胤”と呼ぶ声が聞こえて、俄かに立ち上がる。

 「惟之さん…!?」

 その声音が尋常でないことはすぐに聴き取れた。反射的に惟之の名をくちに乗せ、和胤は部屋から飛び出していった。川上も色をなして、すぐにあとを追ってくる。さすがに廊下を騒がしく走りはしなかったが、摺り足ながらも急いで駆けつける。

 まるでこどもが泣き喚いて、母親を呼ぶも同様である。惟之の声に和胤は胸が引き裂かれた。いま茶室で何が起こっているか、見ずともわかる。茶室の前で川上は和胤を制して、先に立つと茶室の勝手口へ手をかけ、引き倒さんばかりの勢いで開けた。

 「兄さぁ、なんちゆうこつ…!」

 川上が怒声をあげて飛び込み、和胤も踏み込んだ。

 大城は力づくで惟之を抱きすくめて、畳のうえに押し倒している。惟之が大声で喚きたてるのも構わず、そのからだから黒紋付を剥ぎ取ろうとしていた。

 「忠悟どん、ないすっとか。返しゃんせ」

 「返しん!兄さぁ、おいが、あいほどゆたんに!」

 悪びれず、困ったような口ぶりの大城に対し、川上の叱咤は苛烈きわまりない。

 紋付を乱されて上半身は殆ど晒されていたが、袴も解かれておらず、まだ肌身には触れられていないようだというのは見て取れた。大城の魔手から、川上の手で救い上げられた惟之は、和胤へ託されるなり、泣きじゃくって縋りついてくる。

 「和胤…和胤…っ」

 腕に抱いたからだは震えていた。次いで、放って寄こされた羽織を受け止めるなり、手早く着せ掛けて惟之の肌を隠し、そのまま抱き上げる。

 「山口クン、杉サンを落ち着かしてあげらんや。書会を開いた部屋の奥が、火をいれて休めるようになっちょいもす。早うそこいへ行きやんせ」

 「はっ、はい!」

 大城の前に立ちはだかったまま、振り向きもせずに命ずるように言う。和胤の代わりに、川上が大城を何とかする気でいるに違いなかった。

 余りの暴挙に、あたまが真っ白になるほどの怒りをおぼえたが、惟之をみた途端それは吹き飛んだ。すぐに茶室を出て、部屋へ入るなり、襖を全て閉めきった。泣きじゃくっている惟之を宥めるように背を撫でて、ひとまず大振りの座布団へ座らせてから、身形を整えて羽織の組紐を結い直してやる。

 「和胤…何故おれの傍に…居なかった。今日は居れちゅうたじゃろ…護るちゅうたじゃろ…馬鹿ァ」

 すかさず抱きついてくるも、からだが震えているのがわかる。それでもちからいっぱい縋りつき、和胤を罵ることばを喚き散らす惟之。かれを抱きしめて、からだをさすりながら、幾度も“ごめんなさい”と和胤は言い続けている。それしかしてやれなかった。今日この日に不安を感じていながら、惟之から離れた自分自身に腹が立って仕様がない。

 どのくらいそうしていたか、泣きやんで震えがとまったとおもったら、今度は一気にからだの重みが預けられる。呼吸も落ち着いて、ゆっくりとした息遣いが伝わってくる。

 「惟之さん…?」

 「すまん、和胤…当たり散らしてしもうた。おぬしだけが悪いわけじゃーないちゃ…、おれも油断しちょった。じぶんの身をじぶんで守れんとは、情けない」

 「いえ、どがいなことがあっても、離れるべきではありませんでした…おれのせいです」

 謝るひまがあるなら、もっとつよく抱いてくれ、と強請るとたちまち温かな抱擁に包まれる。長い長い安堵の吐息をついて、和胤の胸に顔を埋めて甘える。もうあのおぞましいものは、からだから消えていた。

 「ほんに…、怖かったんじゃぞ」

 「ごめんなさい、惟之さん…」

 ―よくも惟之さんを、こがいな目に遭わせてくれたな。

 できることなら、惟之に触れた大城の手を叩き斬ってやりたかった。それほどの怒りがうずまいている。ぎゅうっ、とからだを抱きしめて、また惟之のくちから、おい、今度こそ骨を折る気か、と苦しげな声が漏れる。腕を解いてやさしく抱きなおし、ことばの代わりに軽い接吻を幾度か交わした。

 上目に和胤を見れば、額のこめかみあたりをぴくり、と震わせているのをはっきりと認めた。そこに潜む怒りの大きさを感じとって、すっと血の気がひく。

 「和胤、おぬし。いま何を考えよるんじゃ」

 「大城閣下に、二度と惟之さんに触れんでほしい、と言うつもりでおるだけですよ」

 押し殺した声音には、底冷えするようなものが含まれていて、こんな声は今まで聞いたことがなかった。ふたりとも押し黙ったまま、不気味な時間が過ぎてゆく。和胤の心中の怒りが沸騰しかけているころ、襖のむこうから様子を伺う川上の、心配そうな声がきこえた。

 「杉サン、落ち着かれもしたか」

 「うん、おれはもうだいじょうぶじゃが…。和胤の怒りがおさまっちょらんのよ、その、大城さんのとこへ行くちゅうてのう」

 「そいはもっともでごわす。…杉サン、山口クン、そこいへ失礼してもよかごわすか」

 どうぞ、と言われて入ってゆくと、憚らずしっかりと抱きあっているすがたが川上の目に入る。

 「山口クン、怒るはもっとも、わかいもす。じゃっどん…何とかおさめてたもんせ。兄さぁのこつ、おいがこん命に代えてでも、二度とこんよなこつ起こさせん。こらえっくいやい」

 静々とした口調でおごそかに言い、次いで川上は姿勢を正すなり畳に手をついて、ふたりに向かって深くあたまを下げたのだ。

 「苦言も含めて、何とか…おさめてたもんせ。おいに二言はごわさん」

 川上は真摯に、しかも階級も年齢も遥か下の和胤に、こうして額づいてまでいる。そのおもいがいかばかりか、察するに余りある。だが、和胤は黙ったままだ。

 それに、いまここで和胤が出ていったら、さすがに問題になるだろう。軍務に立ち戻れば和胤は中佐でしかなく、相手は元帥大将の大城なのだ。あとは川上に頼るよりほかない。惟之はそうおもった。何より、惟之を慰め、癒せるのは和胤しかいないのだ。それを忘れないでくれ、と言外に言われているようでもあった。

 怒りに駆られて、大切なものを見失うおそれも、ないとは言えない。普段が穏やかな性分だけに、本当に怒ったときは、和胤自身でその抑制が利かなくなるのは、まず間違いないだろう。現にいま、利かなくなりかけている。

 「言うたじゃろ、大城さんはああいう性分なんじゃ。確かに怖いおもいはしたが、おれはこれからもおぬしがずっと傍に居ってくれりゃァ、こがいなこともすぐに忘れられる。どうじゃ、怒りはひとまず川上さんに預けて、いつものようにおおらかに包んでくれんか」

 諭すことばを、和胤へ抱きつきながら耳元で囁く。頬と額と髪とを、やさしく何度も撫でて、その度に唇で触れて、惟之は何とか宥めようとする。

 そのいじらしさを、和胤に振り払えるわけがなかった。

 溶岩の熱が引くように、ゆっくりと怒りが消えてゆくのを感じつつ、傷つきながらもいまこうして和胤を癒してくれた惟之を、腕のなかに包みこむ。

 もう少しで我を忘れそうになるところで引き戻され、ようやく川上へ向かって、ご無礼を致しました、と手をついてあたまをさげる。

 「おはんは、おいの弟同然、杉サンはおいの親友でごわす。そいを守れずとあっては、どっこにも顔向けでけもさん」

 従兄の暴挙に対する措置と、“二度と惟之へ触れぬ”という約束は、川上が何としてでも―血判状を書かせてでもとりつける、とまで言ってくれた。
→【6話】 →目次へ戻る 

web拍手 by FC2

| 変わらぬ青空のしたで・91―100話 | 04:32 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2009/10/11 19:50 | |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/102-a38accb2

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。