大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第玖拾話

 大城はどこか、底のしれぬところがあり、味方となれば頼もしいが、敵に回ったら怖い人物である。どうしても、和胤のなかにある不安は拭いきれない。

 「こらァ、和胤!」

 開いている扉のむこうから、惟之の怒声が飛び込んできて、慌てて出ていった。さしたる時間ではないが、隙があるとこうして考え込んでしまう。よくない癖だとわかっていても、惟之のこととなると、そうもいかない。

 「また考えようるんか、何も起きゃァせんちゅうとるじゃろ」

 惟之の部屋へゆくと、呆れながらも笑みを浮かべて待っていた。ふたりともすっかり紋付袴の装いである。和胤の身形を眺めたあと、満足そうに頷き、つと間を詰めて、

 「しゃんとせい、堂々としちょりゃええんじゃ。それにおぬし、おれを護ってくれるんじゃろ?」

 悪戯っぽく笑むも、頼りにしきっているのを隠さずに、ぴたりと寄り添う。今日はずっとおれの傍から離れるなよ、と首にすがりついて引き寄せ、唇を啄ばむ。

 「もちろん、お護りします。たとえ相手が大城閣下でも、ことと次第によっては、ただで済ませる気はありませんけぇ。惟之さんも、あちこち引っぱり回されるでしょうが、くれぐれも用心しちょってください」

 惟之の接吻に応えて、その身を抱きしめる。この温もりは、ただの温もりではない。和胤だけが感じることを許されているものだ。それはけして過言ではない。

 「これ、苦しいじゃろ。ちっとは加減せんか」

 思考を巡らせているあいだに、つい力が入りすぎていたらしい。肋骨が軋みそうなほどの抱擁も、いまの惟之にとっては嬉しいものだ。眉を顰めつつも、くすくすと笑みつつ言う。

 「今の抱擁で、おぬしからどれほど愛されちょるか、わかるのう。さ、行こう」

 それをきいて、もう一度抱きしめたいとおもったときには、もう惟之はするりと腕のなかから抜け出している。

 頼んでいた車に乗って、緑もゆたかな青山までゆけば、かつて訪れた、独逸の森を彷彿とさせる雰囲気がそこにあった。常葉緑の森にある大城の邸は、凝った造りの洋館で、尖塔のような屋根がみえてようやく辿り着く。

 「ゆくさ、おさいじゃったもした」

 門前で主催者直々の出迎えを受け、惟之はすこし面食らったが、その隣には川上もいる。ふたりとも洋館の主にそぐわぬ紋付袴すがただ。さり気なく握手をかわして、新年の挨拶と招かれた礼を述べる。和胤も同様に、大城からいつもの穏やかな笑みを向けられるが、それが逆に嫌な予感を生む。

 「さあさあ杉サン、山口クン。今日は大勢招んで賑やかにないもす」

 と、川上に背を押されるようにして通された広間には、驚くほどの人が集っていた。見慣れた顔ばかりで、めいめい礼服に準じたかっこうでいる。もしも全員が大礼服か正装を纏っていれば、大戦後の凱旋祝賀会と見まがうだろう。それほどの面々であり、人数だった。

 主催者の挨拶のあと、落語や浄瑠璃まで催され、ひとしきり盛り上がる。どれだけ手間をかけているのか、毎度のことながら感心してしまう。庭に土俵まで設えられていて、そこでニセの頃のやんちゃ坊主にかえった薩摩の角力好きが、好取組をみせるのだ。

 次から次へ余興が続き、合間を縫って方々挨拶へ回る間も、和胤と川上が常に惟之の傍へついているのを、大城は遠くからおもしろそうに見ていた。

 「忠悟どんも、健気やなあ」

 川上が稚児のころの呼び名で、からかいをこめて呟く。

 いつもの茫洋とした風格のまま、悠々と振る舞っている。どれだけ川上と和胤が尽力しようとも、すべては大城の掌中にあるということの表れか。

 余興も賑やかなものから、雅趣あるものまで揃っていていた。賑わい好きの惟之もさすがにくたびれ、喧騒を逃れようと、別棟の日本庭園に設えてある茶室で、ひさしぶりに点前を楽しんだ。

 そこへ茶を嗜む吉田が嬉々としてやってくる。しかし、茶室は三人も四人も居てはならない。かれが惟之と一緒にいるのなら安心だと、和胤と川上は暫しのあいだ、渡り廊下をはさんだ先の部屋へ移った。

 書初めをひとつ、したためてみてはどうだろうと、川上の起案で、さらに数人が集まってきた。武骨な連中が神妙に書の指導をうけているようすは、和やかながらおかしみもある。


 程よく、この広い邸内に招いた客人が、思い思いの場で過ごす段になって、大城は動いた。

 ここで茫洋のしたに隠している俊異が発揮される。見ていないようでいて、実によく部下の特性を見聞きして、熟知している。何しろ先の大戦では戦地へ総司令官として赴き、多くの将兵と共に死線を乗り越えたのである。

 こうして黙って眺めているだけでも、大体の察しがつく。寒風吹く庭では、設けられている土俵で技自慢、力自慢が集い、角力がはじまった。洋館のほうでは、大概“お偉いさん方”が残っていた。類は友を呼ぶというが、まさにその通りに分かれて集っている。

 「さてさて、おいの子栗鼠どんは…どこいへ隠れもしたかな」

 と言いつつも、迷わず別棟へ向かっている。体躯に似合わぬ軽快な足取りで、庭を横切ってゆく。もうそこには和の空間が広がっていて、進む廊下の途中で、涼やかな墨の香りに足を止めれば、その先の部屋に幾人か集っていた。従兄弟である川上が数人を前にして、鮮やかな書の腕を披露しているのが、ちらりと窺えた。

 そのころ茶室では、惟之と吉田がすっかりくつろいでいて、句のひとつでも練りたそうな雰囲気になっていた。ざっと茶室を見て、惟之はくびを傾げた。

 「のう、吉田さん。そこに丁度ええ花器があるちゅうに、なにも活けられちょらんのは、ちと寂しいですのう」

 「そういわれてみれば、そうですな。ふむ、庭に椿がえらく咲いておりましたなあ。ひと枝拝借してくるというのはどうです」

 「ほお、椿がそがいにようけ咲きよるとは。そりゃァぜひ、拝観したいところですのう」

 花好きの惟之は途端に目を輝かせて、愛でつつ一輪挿してきますけぇ、ちと待っちょってください、と吉田へ言い置いて勝手口から出て行った。雪駄をつっかけて、どれほどの花があるのかと胸を弾ませつつ庭を回りこむと、そこには確かに椿が咲いていた。それも、息をのむほどの数が咲き誇っている。

 「んっ、初雁もあるんか、可愛ええのう、こっちは白玉じゃな。それにしても随分知らんものがある…」

 手にした花器は、広口の小振りな椀型をしている。藍いろで、すこし錆がかったような釉薬がかかっており、どことなく厚い雪のしたで、ひっそりと息づく清水のようであった。

 じっくり観てまわって迷った挙句、手を伸ばしたのは白乙女の枝だった。みごとな宝珠咲きを魅せる花だが、それはまだ一杯に開いてはいず、慎ましさを残していて眼を惹いた。

 「この花器ならば白が映えるじゃろ、床の間も黒土みとーな濃い色じゃったしのう」

 一輪手折って、庭園にあつらえてある天水鉢から花器へ水を注いだあと活けてみる。と、しっくりそこへ椿がおさまったから、惟之はすっかり満悦である。鉢を両手で大事に捧げつつ、茶室へもどる。

 待っている吉田へ先に花を届けたくて、にじり口からまず花器だけを先に差しいれ、ついで声を掛けようと身を屈めて畳へ手をついた。すっ、と伸びてきた手に花器を取られ、椿の白い芳容が眼前から消える。

 「ほほう、こいはよか花を選びもしたな。もじょかおはんに、よう似っど」

 耳を打った薩摩ことばに、惟之ははっと顔をあげた。四畳もない茶室を、偉丈夫の大城が腰を据えていれば、空間のほぼ半分を占めているように見える。

 「あ、何を―」

 狭い茶室の入口では、如何に俊敏な惟之でもとっさに行動がとれなかった。熊の如きぶ厚い掌にしっかりと手首をとられ、しゃがんだも同然のかっこうでは、逃れようもない。

 「待っちょいもした。さ、おいにもひとつ、点ててくいやんせ」

 そう言いつつ、茶事をはじめるための勝手口へ回らせようとせず、引き寄せる手を緩めない。惟之を捕らえて、いつかのように膝のうえに乗せてしまう。惟之は狼狽した。背後からやんわりとからだに回された腕へ、そっと手を置き、かぶりを振る。

 「これでは、点前を差し上げられません」

 「おはんがせっかく活けた花でごわす、いっとどま愛でてから茶を嗜んでもよか」

 ことり、と床の間へ花器を据えて、大城は惟之の耳へ囁いた。その声音は温かかったが、どこか抗えぬ強さもあった。

 「そ、それは―」

 いつものように、おおらかな仕草で惟之のあたまを撫でていた手が、やがて頬を撫でて首もとへおりてゆき、羽織の組紐を解いて脱がされる。あまりに悪びれないその行為に、惟之はされるがまま、身から取り去られる羽織を目で追った。

 「いけません、大城閣下…こがいなことは…。戯れが過ぎます」

 惟之は身を離すなら今しかない、とからだを捻りながら大城へ諌めることばをかけた。

 「椿に香はねっせえも、こうして漂う香気ちゆうものが、惹きつけるんじゃっどがね。―おはんも、同じちゆうこつごわす。以前もゆたんを、もうお忘れになったんかな?」

 穏やかな中に焦がすようなものを含めて、尚も囁く大城だったが、打って変わって剛の腕で容赦なく抱きすくめてきた。身じろぎすら許さぬという戒めに、惟之はひしひしと身の危険を感じた。やがて、耳朶を唇で食まれ、襟を割った指さきが喉もとを舐めるように滑り―

 「いや…いやじゃ…っ」

 大城の愛撫は、惟之にとって悪夢でしかない。和服越しに肌をさぐる指の感触がおぞましく、吐き気すらおぼえるほどで、穢されるも同然であった。和胤の愛に満ちたそれとは、まったく似ても似つかぬ代物で、恐怖と悲しみが、からだに塗りつけられてゆく。

 「ほほう、もじょか鳴き声でごわすな。こいは、ますます愛で甲斐があいもす」

 今度こそ欲望を滴らせて囁かれ、惟之は全身の毛が逆立つのを感じた。襟を掴まれて、もろ肌まで脱がされかかったとき、惟之は喚いた。恥もへったくれもない。ただ、愛しいひとの名を呼び続けた。

 ―たすけてくれ、和胤。
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