大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  変わらぬ青空のしたで・第捌拾玖話

 陸軍省の執務室へ、今日も大城が訪ねてくるのを、川上は待っている。参謀本部の閑職に居たころとかわらず、ゆったりと椅子に腰を落ち着けて、執務のほかには読書を嗜む、という姿勢である。

 大城はこのところ、頻繁に各所へ出歩いているらしく、あちこちから話を拾ってきては、川上に聞かせにやって来る。他愛のない世間話から、政局の動静に至るまで実に幅広い。

 参謀総長を退いた大城は、いま一時的に内務大臣の椅子についている。元帥の身である故に終身現役であるからして、今日も六尺豊かな体躯を軍装で鎧って、身に似合わぬ、華奢な誂えのサーベルを吊ったすがただ。

 「―ところで、大城どん。おまんさぁ、参謀総長のとこいへようお行きにないやっと聞きもしたどん、また悪い癖が出てしもたんではねじゃっどがね」

 ひとしきり、大城の端然とした語りがすむと、川上はきゅうに表情を引き締めて、大城へ身を乗り出した。

 先月の宴席での大城の挙措いらい、どことなく様子がおかしいとおもっていたのだ。

 何しろ川上は、大城とは従兄弟という間柄で、ニセ―二才どころか稚児のころから、泥まみれになってユッサごっこや角力をとった仲である。そんな彼の行動を察知するのは、わけもない。

 「判いもしたか、川上どん」

 幼い頃みせたのと寸分違わぬ、愛嬌ある笑顔で言い、巨体をゆすって笑った。まったく齢が知命にもなったというのに、“その方”の健啖は衰えていない。

 「困いもしたなあ、かれには―杉サンには…おいどんと同じ、兄弟同然ちゆう者がおりもす。余り構わんでそっとしておいてやってくいやい」

 たちまち、川上は眉をさげて懇願する。惟之と和胤の仲をずっとみてきている上、もっともよく察しているだけに、この気紛れな従兄弟から、ふたりを守ってやりたくもあった。

 「ほ、知っといますせ。山口クンじゃっどが」

 「お、おまんさぁ、知っちょってねごち、そげんなことなさるのじゃいや」

 これには川上も、いつもは笑むように細めている眼を見開いて仰天する。

 軍務やその他の私事においても、大城の人徳はひろくきこえている。その点はいかな川上とはいえ、あたまが上がらない。しかし、大城にも短所というものがある。

 “その方”ともなると、この従兄弟は酷く気紛れで、ありていに言えば奔放ですらある。ニセの頃、薩摩の地でも稚児をめぐって、三日三晩の喧嘩をしたとか、その種のはなしは絶えなかった。まことに手に負えぬ、“ボッケモン”と呼ばれていたのだ。

 それがさすがに長じてからは、軍の要職へ就き、家庭も持ち、すっかり鳴りを潜めた。もういくらなんでも、とおもっていたのだが…。

 「わかっちょっ。あいどん、そいで健気に振る舞っとるのもわかっちょっ。じゃっどん、あげなよか香はそうありもさん」

 惟之の傍らに和胤が居ようが居まいが、大城のなかでは問題ではないらしい。悪い癖が完全に顔を覗かせてしまっている。

 「ほんのちっとでよか」

 そう言ってあとはだまって、くちの端に笑みを溜めたまま川上を見つめる。こうなると、もう梃子でもうごかないのが、大城である。

 「兄さぁ、そいだけは、いけもはん」

 温和なまなざしを送る眼を、このときばかりはきゅっ、とつりあげて鋭くし、従兄弟を諌める。これも効き目がないことも、わかっているが、そうせずにおれない。

 執務室を辞してゆく大城の後ろすがたが、妙にうきうきとしているのを見送ったあと、居ても立ってもいられぬという心境に至ったが、ここで慌ててはどうにもならぬ。

 川上が惟之と和胤を料亭へ呼び出して、密会同然に顔を合わせたのは、それからいくらも経たぬ夜であった。
もう、すっかり街並は師走の様相を呈し、来る新年の装いに追われている。

 一連の話を聞いて、惟之と和胤の顔色が目に見えて青ざめる。

 これでは新年を祝うどころの騒ぎじゃーない。敵陣へ白鉢巻に襷がけで飛び込むも同然じゃ、と、惟之は懐から書状を一札取りだして広げ、川上へ見せた。

 「あぁ…」

 従兄弟の巧妙なやり口に、川上は首を振って溜め息を漏らした。惟之が差しだしてきたのは、大城邸で催す恒例の、新年を祝う宴への招待状であった。

 「よか、ボッケモンの兄さぁを諌めるちゆうのは、おいの役目でごわす。杉サン、安心しっくいやい。おいは胆を決めもした」

 “兄さぁ”のことだ、広大な邸内ならいくらでもその機会はあると踏んでいるに違いない。惟之を例の如くつるりと、惟之を掌中におさめてしまう算段をしているはずだ。

 「ああたたちの、大切な絆に傷をつけさすちゆうわけには、いけもはん」

 「以前は知らんで油断しちょったけぇのう。そうとわかれば、おれとて、そうやすやすとこの身に触れさせるのは許さんちゃ」

 「惟之さん、何があってもお守りします」

 と、惟之も和胤も息をまく。至極当然である。

 ふたりが並んでいるのを見ると、実に清々しいものを感じ取れる。川上も薩摩の出であるから、大城とおなじくそういった“匂い”には敏感だ。こうして見れば、言わずとも、ふたりの仲がどういうものなのか察している。

 これには、惟之も和胤もただあたまの下がるおもいだった。川上という強力な味方を得たことで、緊張しているものがほぐれてゆく。

 「ほんのこて、すまんこつごわすなあ」

 謝る川上をまえに、惟之たちは苦笑いをうかべた。それと同時に、大城がそのような“ボッケモン”だったということに、唖然とする気持ちが大きかった。

 何しろ、惟之ももう、来年―明治四十二年―には知命を迎えるのだ。

 愛を分かち合っている和胤は別の次元に置くとして、よくもまあ、とうに知命に至った大城がそんなじぶんへ目をつけるものだ、と呆れもしてしまう。
→【4話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 変わらぬ青空のしたで・81―90話 | 02:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/100-3e10ffd8

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。