大日本帝國軍の愛と友情の日々

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千尋に届く波の音・第弐拾伍話

 それから後のほぼ一年のあいだ、暢生は那智と一緒に海軍省の軍事部で参謀職に携わることになった。

 艦に乗って海へ出たいという気持ちは勿論あったが、日々進歩する軍略と、諸々の知識を育てるのに夢中で、水交社などに集まって議論をたたかわせることにも時間を惜しまなかった。

 机上の空論と言わせないだけの努力をせよ、というのが那智の言い分で、そこには半ば意地のようなものも含まれていたが、なるほどその通りである。

 一見奔放で破天荒な風にみえる那智だが、よくよくみていると、戦のことについては誰よりも真剣で、その覚悟が飄々とした態度のなかにあって、ふとしたときに端々に垣間見えた。

 軍師というよりは、武将の器であるように暢生は感じていたが、このときの暢生は、まさか自分が、後の日清日露の大戦で、那智の懐刀として働くとは夢にも思っていなかった。

 まだ少尉でしかない暢生は、二度も病に罹ったこともあって、周囲は危うさを抱きつつ見守っているという状況であった。

 病気がちの者は暢生の他にも少なからず居て、海軍省の軍事部の一角といえば、そういった尉官が療養を兼ねて身を置く部署として認められているくらいであった。

 いわば、窓際部署と言っても差し支えない場所でもあり、そこに身を置く若者のなかにはぼつぼつ、尉官で海軍を退く者もまた少なくなかった。そして暢生も等しく、そのような目でみられていたのだ。

 どのような状況に置かれても、功を競うというような真似をしない暢生は、軍事部に身を置いていても、ひたすらに研鑽を積むことに専念していたから、やはりひっそりと目立たず、いつ予備役か退役かを言い渡されてもおかしくないような有様だった。

 修行僧のように、黙々と軍務にあたる暢生を認めて、頼もしく思う反面、歯痒くもあり、那智は上官である小峯や成瀬の前に出て、暢生を庇い続けていた。

 下宿している質素な部屋に積まれた、膨大な写本をして、暢生の強さを感じていたから、相手が上官でも"べらんめえ"丸出しで遠慮なくやった。勿論、暢生はそのようなことが裏で起こっていることを全く知らないでいる。

 季節が巡って明治十八年。また春がくるころに、暢生は筑波へ異動の辞令を受け取った。那智も同様である。実はこれからの艦隊勤務は、前にも増して責任重大である。

 何しろこの辞令は、上官を説き伏せてむしり取ったようなものなのだ。那智はこのことを暢生にひと言も告げなかったが、何に代えてでも必ず海軍に残すと決めていた。

 近海練習航海のあとに、アメリカ方面を巡る遠洋航海が待っている。これは暢生にとって再びの試練であった。

 艦に乗組むと、懐かしい友人たちの顔がちらほらみえて暢生は喜んだが、向こうは何か、信じられないものを見た、というような眼で暢生を認めて、輪に引き入れると口々に言った。

 「おい新見、貴様よく戻って来られたな」

 「もしやこのまま会えないかと思っていたが、良かったなあ」

 そんな言葉をきいて、暢生はやっと自分が軍事部のどのような部署に身を置いていたか気付いたのである。だが、それを知っていてもやはり暢生は変わらずにいただろう、とその場の誰もがおもった。

 「海軍に居られなくなるのは、確かに軍人として悔しくはありますが、若しあのとき海軍を離れていたとしても、国の役に立てることは他にもあるのですから、己が出来ることを為すのみです」

 と、後年この頃のことを聞かれると、暢生は決まってこう言う。これだけを聞くと、影で那智が奔走してくれたこと、その後は友人も加わって、暢生を支え続けてくれたことに対して、何も含まれていないように感じる。

 だが、そう思うのは新見暢生という男を良く知らない者だけで、実際、暢生はこの筑波で務めたときほど、海軍に居てありがたいと思ったことはなかったのである。

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