大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第弐拾捌話

 例の事態が思ったより深刻にならず、早く収拾がついたため、惟之の自宅療養は思いのほか長く許され、梅が散り、桜の蕾が膨らみ始めたころまで続いたが、復帰を期待されているのだろう、陸軍次官その他の役職は留任となった。

 穏やかな日々が続く杉邸において、もはや副官としての仕事はなくなった。しかし、今やすっかり家族のように打ち解けた、惟之や千代たちに引きとめられ、和胤はまだそこを辞さずにいる。朝は杉邸から出勤して、終業になれば計ったように帰ってくる。

 これまで何かと、和胤に対して意地を張っていた惟之だったが、自宅に居るあいだに気をゆるしていて、少しずつ甘えるようになった。まさに痒いところへ手がとどく、といった具合の和胤の気遣いにも慣れ、まだどこか照れる部分はあるものの、意地を張ることは少なくなっている。

 昨夜も居間で碁を囲みつつ、いっそ、おれが復帰するまでここに居りゃァええじゃろ、とお構いなしに我が侭いっぱい言い出すのである。

 以前と違うのは和胤も同じで、上官がどうにも放っておけないという気持ちは、義務感や条件反射から来るものではなくなった。常に己より他人を思いやり、それでいて嫌味を感じさせない。屈託のなさが芯から滲んでいる。こどものように純粋で、懐は深く温かい。そんなかれの人柄に惹かれている。


 いつものように、夕餉のあとは居間で一緒に過ごす。

 今日は孝一と惟之が碁を囲んでいて、和胤はその様子を見守っている。そうしながら、ふと、この温かな居場所が微かな不安を和胤に抱かせ、つい口に出してしまう。

 「うっかりしちょると、閣下の懐で温まりすぎて、気がついたら離れがたくなっちょる。そげなことになりそうで、おっかないですのう」

 和胤のとなりには、千代がちょこんと座っている。長椅子で並んだふたりの膝のうえを、小太郎が行ったり来たり、時々和胤の手に抱かれたりしている。

 持ち出してきた和服の生地の端切れで、千代は四寸ばかりの鞠を、せっせと縫っている。小太郎と遊びたい一心で、こちらには注意を払っていないと思いきや、しっかりと和胤のぼやきともつかぬことばを聞いていて、うふふ、と楽しげに、少女は横顔で悪戯っぽく笑みを零す。

 「なんじゃ、今更気がついたんか。おれァな、隙だらけに見せちょるが、そこにフラフラと無防備で来た奴を、そっと捕まえるんじゃ。そこで去る者は追わんが、留まる者は捕まえたまま離さない、ちゅう戦法じゃ」

 してやった、と言わんばかりの顔をして、惟之はそう言った。碁盤の前で唸っていた孝一もいっしょに、ひょいと顔を和胤へ向けて、にんまりとする。

 「じゃけぇ、おぬしはうっかりこのまま温まっちょればええ。何も心配いらんけぇ、のう?」

 そう言って同意を求めると、すかさずこどもたちは嬉しそうにかわるがわる頷いてみせる。

 「さすがに閣下の姪御と甥御ですのう、そういう笑い方がそっくりじゃ。ふたりとも、悪戯好きまで似たらいけんよ。悪戯っ子の栗鼠は一匹だけでじゅうぶんじゃ」

 してやられた、とばかりに、わざとらしくため息を吐いたあと、目顔で惟之を示しつつ、おどけた口調で言う。こどもたちは和胤の視線を辿った先の惟之を見るなり、けらけらと笑い出し、一方の惟之は忽ち不機嫌な顔になると、くちを尖らせながら、さっと立ち上がり、敏捷な身ごなしで長椅子に近づく。

 「おい、そりゃァ聞き捨てならんぞ。仮にも陸軍次官、第一局長をつかまえて、何ちゅう言い草をしよる。こどもの前とはいえ、おれの面目は丸潰れじゃ」

 和胤の額を、掌でぴしゃりと打っただけでは飽きたらず、そのすこし高い鼻を指さきで抓みあげる。陸軍次官をうんぬんなどと厳しいことを言っておきながら、さして怒ってはいない。

 「いえ、閣下…ここは敢えて言いますが、性質の悪い悪戯さえせんでおれば、愛嬌のある可愛ええ栗鼠だと、おれは思うちょります」

 鼻を抓まれたまま、若干鼻声であったが、和胤はずけずけ言ってのける。言いながら、手を伸ばして惟之の丸いあたまを撫でた。短く切り揃えた髪には白いものが混じっているが、それがあってもなお、くるくるした眼が印象的で、初老の気配すら感じさせない。

 「やかましィわい、遠慮なしに言いおって。はなやきちゅうもんじゃぞ。こりゃ、いつまで撫でちょる気じゃ。離さんか」

 照れているのか、腹をたてているのか、たぶん入り混じっているのだろう。眉を吊り上げた惟之を、和胤はむしろ面白がるように、あたまを撫でる手をとめない。

 そのうちに、抓まれていた鼻のかわりに、頬を両方しこたま抓られる。なんとも幼稚な応酬そのものだが、これはこれで惟之の素直になれない部分を、解消していく役に立っていたりする。
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| 変わらぬ青空のしたで・21―30話 | 22:44 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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