大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第捌拾壱話

 この一件に、和胤も関わっているなどと疑ったことはなかった。

 何しろ、姻戚で兄弟同然の恩田からじかに、 “山口には、絶対に関わらせないから安心しろ”とまで言われていたからだ。帰国してくる和胤を案じて、騒ぎが沈静するまでは何も知らせず、ひっそりと第二部のほうへ行かせておくから、とかたく約束さえしたのだ。だから和胤は何も知らずに、惟之がいまだ広島の第五師団長である、という認識しかないはずだった。

 まして、惟之と和胤の仲である。

 もし事実に気づいたとしても、惟之の真意を汲んで、何としても無干渉を貫く姿勢をみせるべきである。

 恩田率いる第一部の連中は揃って口が堅い。しかしどこかで誰かが、和胤を唆すという可能性もある。どのような謂れがあろうと、心中を察して和胤には遠ざかっていてほしかった。

 それなのに―。

 惟之とて、和胤が帰朝していることは知っていた。

 それも自身がこのような状況に置かれて、心が虚しくなる一方で、逢いたいというおもいは抑えても、なお膨らむばかりであった。それを抑えに抑えて、今日までひとつの便りも出さずに、ひとりで過ごしてきたのだ。惟之が不文律として貫いている“節度”の表れである。

 軍隊の大局から見れば、こんなくだらない派閥争いに係わらせず、有為の軍人には本分である軍務を担わせるべきであるし、惟之の個人的な信条に照らせば、理由が何であれ、こうして訪ねてくることすら許せなかった。ふたりの間柄を汚されたも同然である。

 文字通り雷に撃たれた如く、和胤は坂の途中で立ちすくんだ。まさかこうまで叱り飛ばされるとは、おもってもいなかった。

 今回は軽忽な行動をとったつもりもなかった。だからいま、この坂道のうえで改めて惟之の意志を思い知らされた。何か途方もない大きな力に心がうごかされ、和胤は両眼からとめどなく涙を流した。

 「今ならまだゆるしてやる、帰れ」

 純粋に逢いたいという気持ちさえ、今の状況では許されないことなのだ。

 再び響いた惟之の雷声に、身をすくませて踵を返した。来た坂道をくだってゆくときも、防府から列車に乗るときも、和胤のあたまにあるのは、惟之のことばかりであった。かれを想うが故に、だからこそほかにすべきことがあるはずだ。

 帰途が東海道にさしかかる頃には、もう和胤に迷いはなくなっていた。この先たとえ親しい誰か―恩田や竹内など―に、惟之の説得に行ってくれと頼まれても、一分もうごかない決意でいる。

 それがどのような結果をもたらしても、惟之に対する信頼と軍人としての本分を外れてしまうよりましである。

 こうして帰ってきた和胤は周囲に何も言わず、沈黙を以って答えとした。あとは第二部第六課へ引っ込んで、蟄居する惟之と似たような心境で軍務に没頭した。


 惟之もこのことは誰にも告げず、相変わらずの隠居生活を続けた。

 ただし、こどもたちの脳裏にこの一件は鮮やかに記憶され、その後もながく語り草にされた。相手がひとりとは言え、軍人を近寄らせもせず、只の一喝で追い返した惟之の度量に、畏敬の念を抱くばかりであった。少年たちにますます慕われたのは言うまでもない。


 ふたりを分かっていたこの騒動も、結果的には日露戦役後の漫然とした空気が生んだものであったと言えた。

 なぜなら翌年の明治四十二年に、某侯爵が大韓帝国で暗殺されたのを機に、ぴたりと騒ぎはなりを潜め、元通りとはゆかぬにしろ、本来あるべき軍部へ立ち戻ったからだ。

 惟之は辞表をとり下げる代わりに、陸軍大臣の更迭と次官辞任を承認させ、参謀総長の椅子にすわることを受け入れた。

 軍部の行く末を、長いあいだ陰ながら案じていた川上が、この最中に中将への昇進を受けて、階級はともかくとして人望と実力ともに申し分のない人物が、新しく陸軍大臣に就いた。この人事に、誰も反対を唱えなかった。

 和胤はあいかわらず第六課の独逸戦略班にいたが、辞令が届き、翌日付けで、第一部第二課へ転属となった。

 実質、惟之の膝元へ戻されるかたちになって、内心でほっとしていたが、あの一件以来会ってもいないし、便りのひとつも出していない。会うのは怖かったが、恩田の計らいで、参謀総長の部屋へ直接辞令を置きに行かされた。

 「着任承った、しっかり頼む」

 と案の定、軍務に関しては変わらずあっさりとした会話だけで終わり、惟之がその心の奥で何をおもっているのか知る由もなく、和胤も儀礼的にあたまをさげて、退出しようと背を向けた。

 「定刻になったら、また来るように」

 と、思いがけないひと言を掛けられ、和胤は我もなく胸が疼くのを感じた。はい、伺います、とだけ言い残して、馴染みの顔ばかりが揃う古巣同然の職場へもどった。

 私的に逢って何を言われるか、それを考えるだけで血の気がひくおもいだったが、とりあえず定刻まではそんなことも忘れて軍務に没頭する。

 二年前の大幅な駐在武官転属の効果が、確かに表れていて、いまこの第一部第二課にいる連中は、外国を識っている者が多く、自然と感化される者も増す。担うのが軍令だからといって、あたまが凝り固まり易い参謀職も、国際感覚に鋭敏な者がかなり増えた。

 過去の諍いは置いておくとして、こうして軍部内が改善されてゆくのは、国を守る者としては団結も深まるし、心強いものがある。

 定刻になると漸く気を抜いて、やっと皆が笑顔を向けて来る。

 近々、内輪で和胤の歓迎会を催すと言って、以前と変わらぬいつもの調子を見せてくれる。杉閣下は総長になられたから、おいそれとお誘いできないな、などと言って寂しそうな顔をした点だけが、あのころ部長だった惟之がここに居たときと、唯一違っていた。

 積もる話もあったが、今日は惟之に呼ばれていることもあって、そこそこに切り上げ、参謀総長の執務室へ赴いた。惟之はまだ机に向かっていて、寄せられた案件へ決裁、不決裁の判を捺していた。

 扉をたたいて入り、近くにもゆけずに畏まっていると、不意に惟之は顔をあげた。いつもの澄んだまなざしでみている。にこっ、と笑みを浮かべて、

 「そがいな、叱られたこどもみとーな顔しちょらんで、ちと、茶を淹れてくれんか。今の副官はなかなか優秀じゃが、おぬしの淹れた茶がええ。たのむ」

 と、温かさを隠さずに言ったから、和胤はぎゅっと心臓を掴まれでもしたようで、切ないやら嬉しいやら、申し訳ないやらで、涙が堪えられなかった。

 「何を泣いちょるか、ほんに困ったやつじゃ」

 あの日、郷里を訪ねて以来貫いてきた、和胤なりの誠意を、惟之は認めてくれていたのだ。それはそのまま惟之の信条に基づいて受け入れられ、今まで以上の信頼と愛情をも生んでいた。
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| 変わらぬ青空のしたで・81―90話 | 18:52 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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  変わらぬ青空のしたで・第捌拾弐話

 定刻より一時間遅れて退庁し、惟之に誘われるまま市ヶ谷の杉邸を久しぶりに訪れた。

 参謀本部からずっと徒歩で帰路についたが、その途中特に会話を交わすわけでもなく、ただ並んであるいた。それだけだったが、いま隣に惟之がいることが幸せで、和胤の胸中は温められていた。

 居間で対峙して座り、惟之はまじまじと和胤の顔をみつめてくる。そのまなざしは穏やかで、いつになくどこか重さがあった。清水の流れの底にある、玉石をじっとながめるような。

 「のう、和胤。…今回のことは、おれの辞表騒ぎと蟄居と、尾木の爺が引っ込むことで、何とか事態は収まった。しかしな、世が世なら…、たとえば維新の始めであったなら、おれァ暗殺されちょっても、おかしゅうなかった」

 そのまなざしのまま、惟之は静かにことばを発した。和胤は眼を見開いて息を飲んだ。卓のうえに乗せていた掌を、かたく握りしめる。

 「―いや、おれだけでなしに、大城さんも尾木の爺さんもじゃ。維新の刃のしたを潜っちょるから、そう感ずるだけかも知れんが。今回は陸軍内部の揉め事だけでおわったが、それでもあの有様じゃった。旧弊を変えてゆかんと、もし今度国事にかかわることで、ややこしい事態が起きたら…」

 そこまで言って、惟之は口ごもった。言いたいことはみなまで聞かずともわかる。だが、惟之がそこまでおもい詰めることはないはずだ。

 「藩閥に囚われぬ、意識せぬとはいえ、おれも長州の出じゃ。今回は徹底して筋をとおしたから、若い者は眼を瞑ってくれたが。おれァな、参謀総長を最後として、退官せるつもりじゃ」

 惟之くらいの世代と、それより若い世代ともなると、意識の違いが明らかで、それが見えぬ壁となって、間に立ちはだかっている。

 ひとつ舵取りを間違えれば国がなくなるという、瀬戸際に立って前だけをみて走ってきた。そんな時代に生きた者たちは、その作りあげた体制と共に、去るべきときが近づいているのかもしれない。と、惟之は隠さずに吐露した。

 だがそこに、武士の心は受け継がれているのだろうか、と危惧を感じもする。そこが、意識の違いであって、武士道の精神といったものが、若い世代には身についているどころか、認識すら希薄であるように、惟之にはおもえた。

 根拠もなしに危惧を抱いているわけではない。蟄居中に訪ねてきた者たちのことばを聞いていて、切実に感じとったからだ。

 惟之個人をとってみれば、かれらしく、真っ直ぐでひたむきな軍人の道を歩んできている。何人にも屈さず、何人にも媚びず、それも自然体だから、畏敬され続けている。

 その証拠に今回の騒動で、誰も惟之へ矛先をを向けなかったではないか。そのことすら、自身の功―というより人徳―とせず、過ちとして背負いつつ、静かに軍を去ろうとしている。

 確かに今回のことで、周囲に対する惟之の影響力というものがどれほどか、目の当たりにした。しかしそれを以って、惟之が軍から身を退く理由にはならない。

 「それにな、このままのうのうとしちょって、今回みとーに、おれの傍に居るおぬしまで、何かの拍子に巻きこむやも知れんちゅうことが、いやなんじゃ」

 「…あれは、おれの浅薄な思慮のせいで、惟之さんのせいではありません。軍務に関しては正しい道を進むことが本分でありますから、どのような立場に立とうとも貫きます。惟之さんがそうしているように、おれもそうします」

 そうすれば必然的に、惟之と同じ立場に立つことになるだろう。義理をかいてまで、長いものに巻かれるなど真っ平ご免です、とはっきり告げる。

 「それでも退官せよちゅうなら、おれはそげな軍隊に居りとうありませんけぇ、辞めます。辞めて他の道をさがします」

 「いや、しかしおれのような軍人はもう―」

 「もう要らん、とでもおしられたいので?はっきり言うちょきますが、もし惟之さんが暗殺されるような事態が起こったら、陸軍の良心は消えたも同然、おしまいですよ」

 どこまで無私無欲なのか。この自己犠牲の塊のようなひとは、ここまではっきり告げても、ただ困惑の表情で和胤をみつめている。

 「そりゃァ、言いすぎじゃろ。おぬしがおれの肩を持ちたいのはわかるが…」

 和胤は我慢できなくなって、椅子をなかば蹴倒すような勢いで立ち上がり、卓のうえに手をついて身を乗り出した。

 「それなら、逆に宣言してもええですか」

 「な、なんじゃ」

 「もし、惟之さんが先ほどおしられた通り、総長を最後に退官なんぞしたら、おれが殺します」

 「なっ、何ィ言うちょるかっ。おぬし眼が据わっちょるぞ、正気かっ」

 「正気です。あなたはほんに、ご自身のことを顧みなさすぎます。今回誰が惟之さんへ、抜いた剣先を向けましたか?向けていないでしょう。それは何故か、考えてください。おれがそうしてまで止めたいと、そうおもっちょる真意くらい、察してください」

 和胤が身を乗り出したぶん、惟之は身を引いた。私はともかく、公の場面ではすこし距離を置くべきかと悩んでいたが、今の惟之はすこしでも目を離したら、その隙に本当に軍を辞めかねない。

「わ、わかった…。おぬしがそこまで言うなら、退官せるちゅうたことは取り下げよう。しかしな、それでもし、おれはともかく、おぬしに累が及ぶことがあったら―」

 渋々言う惟之に、和胤は卓を回りこんで席へ詰め寄った。その気迫に圧されて、大いにうろたえる。

 「及んでも構わんです、そのときに初めて正しさが証明されるちゅうことですから。それに例え、あなたのことで死ぬような目に遭ったとしても、心残りになるとしたら、あなたを守りとおせたか否か、ちゅうことだけですかのう」

 「な…っ、何を言いよる。命をかけるほどの価値が、おれにあるのか」

 「その質問、そっくりお返しします」

 「おれなぞの命でええのなら、いつでもおぬしのためにくれてやるわい。しかし、おぬしはそげな真似はせるな。その代わりにおぬしは生きて、おれの遺志を継いで、しっかりこの国を守ってゆけ。愛しちょるのはわかったが、おれのために命を投げ出すことなぞ、何があってもしてくれるな」

 ああもう、なんちゅうことを言わすんじゃ、と言って羞恥の極みに陥った惟之は、和胤から顔をそむける。

 「なるほど。惟之さんの意思はわかりました。ごもっともです。それは極力、ご希望に副うように致しますが…、はっきりとお約束はできかねます。時勢はどう転ぶか、予測がつきませんから」

 できれば譲り葉のように、時が来たら退いて、次を継いでもらうのが一番良いのだが、そうでない時の覚悟も必要である。今回はそれを真剣に考える機会にもなったのだ。

 「それだけ、あなたというひとを愛しちょる、ちゅうことです。公私の別はつけていても、気持ちばかりは区別せるのは難しいですけぇ。公では公なりに軍務に対する誠意として、表しちょるつもりですが」

 惟之が悪戯っ気を発揮して、からかい半分に和胤の羞恥心を煽るのとわけが違う。これは真剣に告げられているだけに、逃げ場がない。

 「わかってくださいましたか?」

 「わかるもわからんもないっ!そがいなこと、いっぺんに言うやつがあるかァ!羞ずかしゅうて堪らん、触れるな…。もう、心臓が溶けそうじゃ…」

 耳まで真っ赤になりつつ、椅子を蹴って立ち、あとずさった。和胤が逃がすはずはなく、すかさず伸ばしてきた手に腕を捕らえられ、抱きすくめられる。

 「あ、あ…っ、こら…やめんか」

 「溶けるなんちゅうことを言われて、やめる馬鹿はおりません」

 軍服のうえからでも、からだを探る手の感触が生々しい。後ろから耳朶へ口づけられ、耳のふちを擽る舌先のうごきが和胤のなかに蓄積している、“ことばなき愛のことば”を如実に語っていた。
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| 変わらぬ青空のしたで・81―90話 | 00:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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  変わらぬ青空のしたで・第捌拾参話

 暮れてゆく秋の夕べ。

 鈍く、重たげな朱色の陽の光が室内に射している。自邸の居間には、何の物音もしない。否、しんと静まり返ったなかに、からだが触れ合う衣擦れの音と、惟之の唇から漏れる微かな吐息が、間断なくきこえている。

 和胤に幾度となく抱かれ、あたまの先からつま先まで全てかれに知り尽くされて、逆もまた然りであったはずだった。だが、こうまで、心が震えたことがあったか。和胤の覚悟を知ったうえだからか、死をも厭わぬほど愛していると告げられたからか。

 いままでと何もかもが違う。これまでの交感など他愛のない、虚の甘さを貪りあっていたに過ぎなかった。今なら、そう断言できる。背後から抱きすくめられ、抜け出そうとしても腕の檻は堅牢で敵わない。さらに手指は頻りに惟之のからだを這いまわる。

 軍服のうえからだというのに、直に肌へ触れられるよりも、羞恥が高まる。和胤の掌や指のうごきを、布越しであるが故に強く感じ、鋭敏な触覚がより刺激されてゆく。

 おれは、こんなにも浅ましい体質だったのか、と身を捩って抵抗を試みるが、火に油を注ぐようなもので、ますます拘束はつよくなる。しかし、和胤の胸の中はあたたかく、惟之の確かな居場所はここであると教えられる。

 からだを探られるたびに、ぴくっぴくっと小刻みに反応を示して震え、そのようにして熱が蓄積した証拠に、軍袴越しにさぐられた股間が、さして煽られもせぬうちに、応える。惟之の一物ははしたなく頭を擡げて和胤の掌へ擦り寄ってゆく。

 「あぁ…」

 身に帯びているものはすべて、陸軍中将を示すものであり、それを帯びているうちは“公人”であるべきなのだ。自邸に居ても、何時如何なることがあっても、そのように振る舞うべきである。と、惟之の中だけに存在する決まりごとがある。

 いつか、和胤とふたりきりでいるとき、一度だけそれを破ったことがあった。もう二度とするまいと、自身に言い聞かせていた。それをいま、再び破ってしまった。自身の不甲斐なさを嘆き、耐えられずに漏らした吐息だが、多分に甘さを含んでいる。

 陸軍中将という堅固な殻で鎧っていても、和胤は迷わずにそこから生身の惟之を掴みとって、引きずりだした。

 以前は暴くのも躊躇い、銀釦のひとつすら外せなかったその指が、襟もとを滑って釦にかかる。ひとつ、ふたつと外して、詰襟が緩む。禁欲的に隠されていた首もとが、たちまち暴かれた。和胤は再び耳の縁へ唇を寄せて、あまく食む。そこからゆっくりとうなじまで口づけながら、片掌に包みこんだ惟之の一物をも煽りたて始める。

 「ぅ…ん…ッ」

 いつまでも若葉の息吹を感じさせる、少年のような惟之の肌の色艶は、しなやかな肉づきを備えてそこに在る。指さきで撫で、唇を寄せて、舌で味わう。それらの情欲を絡めた行為がもたらすのは快楽だけでなく、震える肌のしたで息づく惟之の根幹―魂、とでも言うのだろうか―を感じ取れる。和胤にとって至福であり、恍惚をおぼえる瞬間でもあるのだ。

 いまも、口づけつつ濡れた舌を首すじへ這わせて、和胤は欲望をかくさず示してみせた。たっぷりと淫靡な水音を響かせつつ、貪るように舐め、歯をたててやわらかく噛みつく。

 肌を這う舌のうごきは緩慢で、ぞろりとした熱い感触に舐められてゆくたびに、惟之は戦慄をおぼえた。和胤に掌握されている一物の棹が、びくり、と跳ねる。反射的に身を屈めると、胸に提げていた飾緒が外れて、金糸で編まれたそれが夕陽をはね返し、視界の隅で揺れた。身じろぐと、垂れた先端の石筆が触れあい、金属のぶつかる澄んだ音がして、それで惟之はいまにも崩されそうな自我を保った。

 「和胤…」

 「なんですか」

 からだを捻って向きあうと、和胤は思いのほか余裕をみせている。おおらかな笑顔で惟之を包みつつ、ことばを待っていた。

 「おぬしの愛ちゅうのは、ようわかった。じゃけぇ、これ以上は、この身形のままで、ことに及ぶわけにはいかんのじゃ」

 その口調は厳しくもなく、怒ってもいず、快楽に浮かされて熱っぽく息を吐いて甘くはあったが、眼に揺れる真摯な光をむけて訴えた。

 「続きをせるちゅうなら、階上へ行って、せめて、この面倒な殻を取り払ってからにしてくれ」

 「いかんですか…?」

 惟之の懇願に、目許を笑ませたまま訊き返す。答えを待たずに今度は臀へ両手を伸ばして、きゅっと掴んでやわやわと揉み始めた。

 「ぁ…あっ、いかん…ちゅうとるじゃろ…和胤!」

 既に股間を煽られて、棹を立ててしまっているところへきて、この行為は堪らない。しかも隙をみて脚をさしいれて膝を割られ、腿を股間に押し当てて揺り動かされる。

 「階上へ行く時間すら惜しいっちゃ。惟之さんのこがいな姿を見せつけられて、これ以上焦らされるのは、堪らんですのう」

 「ば、馬鹿ァ!見せちょらんわい、おぬしが止めんけぇ、いかんのじゃ…っ」

 羞ずかしさのあまり、腕にしがみつき、胸に顔を埋めて喚くと、和胤はくすくすと含み笑いを漏らしつつ、愛撫を施していた手を離した。そのまま惟之を肩に担ぐようにして、抱きかかえてしまい、小気味よく締まった惟之の臀を片手で撫でつつ、夕闇に溶け込みつつある居間を出てゆく。

 薄闇のなか、惟之の部屋で再び向かいあって立ち、唇を重ねる。身に纏った殻を、なかなか脱がせようとしない和胤を、上目で恨めしく見つめた。

 「ふたりきりでここで、おれの前だけです…、たとえ軍服を着ちょっても、おれなら触れても、こうしても構わんでしょう…?」

 ぴたりとからだをつけて、抱きとめると、惟之の耳もとへ甘い願い事を囁く。腰へ掌を這わせて、欲望を孕んだ愛撫を始め、臀を揉む手つきに遠慮がない。それがまた熱を高めさせ、惟之はついに首をたてに振った。

 めったに我が侭を言わない和胤の願いだけに、惟之も根負けした。快楽に乗じての、力押しに負けたとも言えるが、こうまでされては諾いてやるよりほかない、と甘い吐息のしたから、それだけをかろうじて告げる。

 公の場ではけしてできぬことを、せめてふたりきりの時だけはしてみたい、とずっとおもっていたと和胤は言うのだ。信条に照らせば、これは秘め事のなかでも、特に秘むべきことである。禁忌は時として背徳的な官能を生む。惟之のなかに、そんな感覚が浮きあがった。
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| 変わらぬ青空のしたで・81―90話 | 17:00 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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  変わらぬ青空のしたで・第捌拾肆話

 からだから、殆どちからが抜けかかっているのを、ここまで来て隠す必要もなかろう、とかまわず和胤へ寄りかかって、胸に頬を擦り寄せた。

 陽も落ちてすっかり闇へ沈んだ部屋のなか、和胤は惟之の肩を抱き、ひとまず手近にある橡の椅子へ腰を落ちつけさせる。わずかな灯りもないままでは、どうにも不便である。卓のうえの燃料式ランプへ何度か燐寸をつけて近づけ、やっと灯りがともると、向かいにいる惟之のすがたが幽かに浮かんでいる。

 椅子に身を沈めて、艶を含んだまなざしをふわりと漂わせて、気怠けな様子でいる。見れば、和胤が暴いたはずの軍服の襟元を元通りに、釦をかけてしまっている。

 「惟之さん?」

 さっと襟もとを手でおさえ、ちらりと和胤へ視線をやるも、すぐに逸らせる。どうにも落ち着かないらしく、もじもじしている。迷子の栗鼠がそこに居るようである。

 「和胤…先刻は、その…ええちゅうたが、やはりこれだけはいけんのじゃ」

 ことばを覆すことは、今までしたことがない。それにも羞じいりつつ、うつむいた。いまさら、羞ずかしいからやめてくれ、とは言えない。

 和胤はひっそりと溜め息を吐いて、椅子の前に身を屈める。顔をあげようとしない惟之だが、頬を両掌でつつんで指さきで撫でると、嫌がる様子もなくされるがままである。

 「何故…ですか?」

 耳へ触れそうなほど唇を近づけて、甘い声音で低く囁いてみせると案の定、惟之は肩をすくませた。散々に弄りまわして、快楽へ漬けこんだからだの熱が、容易に冷めるわけがない。それを知っていて、和胤はもういちど訊く。

 「おぬしゃァ、おれを弄ぶ気かっ」

 堪りかねて言う声に、いつもの怒気はない。和胤は否定も肯定もせず、再び襟へ指をかけると、ねだるようにかるく引いた。それに次いで、膝へ置いた手を腿へ滑らせながら股間を撫でてゆく。

 逃げ場がないことに気づきもするが、和胤が解放するとはおもえない。惟之は抵抗するそぶりを見せず、再び銀釦を外されてゆくときも、僅かに身じろいだだけで許した。

 怒ったような顔をして、心もち横へ逸らしているが、上気している頬のせいか、艶かしい。和胤はその頬と耳朶へ唇を落としつつ、今度は上衣どころか、したに着ている立襟のシャツまでも暴いていった。

 肌へ直に触れた掌をゆっくり動かして、愛撫を施してゆくと、たちまち反応を示す。身動きもままならぬ椅子のうえで、微かな吐息とともに、こどもがむずかるような仕草をする。それが愛しくてならず、背に腕を差し入れて抱きしめた。

 「可愛ええですのう…惟之さん」

 「何ィ言うちょるか…っ」

 「そげなところが、ですよ」

 笑みを含みつつ囁きかけ、胸へ唇を落とし、乳頭を舌先で転がして吸い、かるく歯をたてて噛む。食するが如くのそれらは、敏感な惟之にとって耐えきれるものでなく、腕の中で仔鹿のように跳ねまわって、嬌声をあげた。

 「惟之さん…」

 和胤も多分に熱っぽいまなざしで、惟之の媚態を堪能していた。覆い被さったまま、すこしからだを離して、股間を揉むように一物を煽り始める。時折身を屈めると、唇を吸ったり、首すじを甘く噛んだりする。

 そのつど、ちょうど暴いた胸へ、和胤が吊っている飾緒の石筆が触れ、ひやりとした金属の感触が肌を滑る。桜の意匠を刻んだ権威の象徴である飾緒は、今や何の意味も持たず、更に自身の吊っている飾緒は、胸に提げた飾りが外れて下がり、火照った肌のうえにだらしなく這っている。

 このようなふしだらな行為さえ、惟之のなかに潜む淫欲は躊躇いもせずに飲みこんだ。背徳がもたらす官能から、眼をそむけることはできなかった。甘美なそれに酔い、縒られた理性の糸が、さほど時を要さずに解けてゆく。

 軍袴を下着と共に膝まで引き下げて、あたまを擡げた雄の象徴を露わにする。体躯の割には、惟之は立派な一物の持ち主である。直に掌へ包みこんで、ゆっくりと棹を扱き、雁首を指で捏ねくり、睾丸を揉みこむ。惟之を知り尽くしている和胤の愛撫に応えて、一物は掌中でびくびくと脈打った。

 「このあとは、どう致しますか?」

 「いい加減に…脱がせんかっ、おぬしゃァいっこも身繕いを乱しもせんで…、ずるいじゃろ」

 「ずるい、ですか?たまにはこのまま、させてくれてもええでしょう。何と言うか―」

 頬がつくくらい顔を寄せて囁きあい、最後に耳の縁へ唇をつけて囁いた和胤のことばに、惟之は骨の髄から震えがはしった。

 ―陵辱じみた行為も、たまにはしてみたいちゅうことですよ、閣下。

 そう、和胤は言ったのだ。欲望の何もかも曝け出して、深く感じ合いたいという、その表れか。

 「いつも焦らしちょるくせに、まだ足りんちゅうのか。おぬしは…、どうせ嫌じゃちゅうても、諾かんのじゃろ。ここまでしようるんじゃ…もう、好きにせい」

 「惟之さんだって、おれをええように御して、好きなだけ乗り回しちょるじゃーないですか」

 「な…っ」

 これには惟之もことばを返せず、恨みがましい眼で和胤を睨みつけるに留まった。

 それを見て、お互い様です、と一重の切れ長な眼を妖しく細めて言うなり、惟之の唇を啄ばみ、絡みつくような濃厚な接吻を施す。息をついで唇を重ねるたびに、舌を絡めた水音が響き、惟之の棹を扱く和胤の手つきにも、執拗さが加わってゆく。先走りが零れて雁首をつたい、棹を濡らす頃になると、惟之はもどかしげに腰を捩った。ここまでくると、反射的に後孔が疼いてくるのだ。

 「ぁあ…もぅ…、臀が疼いていけんちゃ…。和胤、焦らさんで、弄ってくれ…」

 解放された唇から、信じられぬほどの淫靡なことばが漏れて、熱い吐息混じりに、蕩けそうなまなざしで見つめられる。普段は引っ張り出すのも苦労する、惟之の秘められたすがたは、背徳がもたらす興奮も手伝って、あっさりと暴き出された。

 このような状況で愛し合うことは、ずっと密かに抱いていたから、和胤の心中に渦巻く情欲は並のものではない。惟之の懇願にも、頷きはしなかった。

 「その前に、おれのものも起こしていただかないことには、始まりませんよ」

 肩にしがみついて震える手を掴みとって、和胤は自身の股間へ導き、触れさせた。既に硬さを増して、反応を示しているのがわかる。

 「う…、どうせいっちゅうんじゃ」

 「こうして―」

 両脇へ手をつっこむなり、ひょいと椅子から立たせる。だらしなく着崩れた軍服へ手をかけて、手早く釦を掛け直し、飾緒もきちんと提げる。但し、軍袴はすっかり取り払って、素脚を晒して立っている。当然、昂ぶらせた一物は屹立したまま、軍服の裾から覗いている。

 空いた椅子へ和胤は腰をおろし、向かいで羞恥を隠せずに立ち竦む惟之の手を、催促するように強く引いた。倒錯した感覚に陥り、惟之は熱に浮かされたか、酔ったように、半ば夢うつつの表情でいる。

 ゆったり腰をおろしている和胤の前に、ふらりと立って膝をつくと、両の腿へ手を這わせて、軍袴の前をくつろがせた。下着を引きおろすと、両手で一物を探り出して支え、手始めに雁首をひと渡り舌で舐めまわした。

 惟之の口淫は巧みで、“和胤を乗り回す”ときなどは惟之が主導権をにぎっているから、これでもかというほど一物を嬲って、和胤を翻弄していたものだが、今日のそれは違っている。飢えたように棹へ舌を絡め、雁首を咥えて喉奥まで導いて満たす。和胤の一物はその舌遣いに煽られて、屹立を始めた。

 昂ぶり、質量の増した棹は咥えるのも大儀なほどで、唇の端から唾液がつたい、根もとの茂みを濡らしてゆく。あたまを振りたてるたびに淫靡な水音が響き、それが和胤の耳を聾して、からだの熱を高まらせる。先に、散々一物を煽られたままで放置されている惟之にとって、この行為はくるしかった。和胤のものが屹立してゆくに従い、腰が疼いて気が散ってしまう。口淫がおざなりになるまえに、唇を離した。

 「これ以上は無理じゃ…、からだが疼いてどうにもならんけぇ、頼む…」

 くたり、と腿へあたまを預けて、悩ましく息を絡めて呟き、それでも掌で棹を包んで扱いてゆく。いつになく従順な惟之がいじらしく、和胤は手を伸ばしてそっとあたまを撫でた。

 「ええですよ、その代り…今日はおれの言うことを諾いてくださるのなら、ですが」

 「好きなようにせい、ちゅうたじゃろ…」

 頬を染め、完全に拗ねた口調で言う惟之を抱えあげ、かるがると寝台へ運んだ。
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| 変わらぬ青空のしたで・81―90話 | 22:33 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

  変わらぬ青空のしたで・第捌拾伍話

 いま、和胤の思考にあるのは、いわゆる、体位のことである。普段なら、いわゆる“抱き地蔵”や“鳴門”といった体位で行為に耽るのだが、今まで“抱き上げ”や“鵯越え”といったような体位は、惟之が頑として受け入れなかった。どうにも恥辱的で我慢ならぬと、眉を吊り上げて怒るのである。

 性格もあってか、前戯などは和胤が先導すること半々だが、行為そのものは惟之が主導権を握ることが殆どで、受け側でも能動的である。文字通り和胤を御する、“本駒駆け”や“流鏑馬”を好んでいる。

 行為の最中、惟之が甘えて抱きついたまま、離れぬときも多々あるが、それはそれで和胤も悦びを得ていたから、良かったのだ。それに、今日まではあたまのどこかに、いかに相愛であっても相手が上官である、という意識がこびりついていただけに、行為に関してあれこれと注文をつけたり、文句を言ったりしたことはなかった。

 もう、いまは違う。生のままの惟之を、和胤はみている。強引になだれこんで、いっそのこと、“達磨返し”や“理非知らず”といった、倒錯的な体位で惟之を鳴かせてみたい、と、邪まともいえる考えが浮かんでくる。

 寝台のうえで、うつ伏せにさせた惟之の臀を撫でまわしつつ、片腕で抱えこむようにして腰を引き上げる。軟膏を塗りつけて後孔を馴染ませたあと、指をふたつゆっくりと埋めてゆき、そっと慎重になかを慣らしてゆく。痛みを与えぬように細心の注意をはらいつつ、確実に拡げて頃合いをはかる。

 今の姿勢ならば、容易に“抱き上げ”の体位に持ち込めるのだが…。普段あんなに嫌がっている惟之へ、言うことを諾け、という印籠を持ち出してしまうというのも、どこか酷ではある。と、ちらりとよぎる。が、今日は“陵辱じみた”行為に耽りたくて、ここまで惟之をいいように扱ってきた。いまさら躊躇うこともない。己の欲望が滾っているのだ。

 「あ…ァ、ん、ぅ…」

 臀を掴んで揉みしだくと、溶けるような甘い声がちいさく唇から漏れ出て、拓いた菊座がひくり、と蠢く。咥えこんだままの指を、きゅ、と締めつけられて、和胤はどうにも我慢ができなくなった。

 ゆっくりと指をぬきとり、もどかしく軍袴を引き下げて脱ぎ、寝台の端へ畳んで放り投げた。一物は昂ぶったままである。がば、と文字通り襲いかかるかっこうで惟之へのしかかった。

 「か…和胤っ、なにをせるんじゃ。あぁ…っ、あ…!」

 前触れもなしに、いきなり襲われた惟之は慌ててからだを捻ったが、時すでに遅し。疼く菊座へ熱い棹が押し当てられ、雁首がぬるり、と体内へ潜るのがわかる。

 華奢な腰を鷲掴みにされ、強く引き寄せられると、和胤の一物が、奥深くへ潜ってゆくのがわかる。無理に捻っていた上体へ、覆い被さるように抱きとめられ、押さえ込まれた。

 「おとなしくしちょってください、言うことを諾けちゅうたでしょう。抵抗せるなら、おれも黙っちょられませんよ」

 「う…和胤…、い、や…」

 熱い息のしたから、脅迫のことばを低く囁きかけられ、惟之はおとなしく力を抜いた。再びうつ伏せにさせられてしまうと、背後からひと息に貫かれて、はしたなく声をあげて鳴いた。

 「あぁっ」

 惟之は受動的な行為をしたことがなく、一方的に快感を与えられるのは初めてで、すこし怖かった。しかしそれ以上に、もっとも恥辱をおぼえる体位で、犯されるようでありながら、快楽に応えている淫らな己を知る。肺から吐き出される息は浅く短く、嬌声とともに止むことがない。

 「いや…じゃ、こがいな辱めるみとーな…」

 いくら快楽に浮かされているといっても、すこしばかり、裏切られたようなおもいがちらつく。涙を滲ませつつ、切なく声をあげた。

 「そうせるちゅうたでしょう、聞いちょらんかったのですか?それに…、辱められようると思っちょるにしては、随分と応えちょりますな。なかをこんなに熱くして…ほら、わかるでしょう」

 意地悪く言って羞恥を煽りつつ腰を揺り動かすと、反応を示してきゅうっ、と内壁が収縮する。充分に慣らしているから、構わずに両腿を抱えこんで、うねらせながら突き上げた。

 「ひ…、あァ…、あ!」

 縋るように寝具へ手を伸ばし、しがみつく。軍服の袖に銀糸で縫いこまれた二条の袖章と、三つの星章が、薄い灯りに反射して光を放つ。

 容赦なく突きこまれ、内壁を抉られるが、そこに生まれるのは熔かされるような快楽しかなく、惟之は陵辱されているという意識が抜けきらぬなか、倒錯したこの行為に酔わされていった。

 「もっと、声を聴かせてください」

 憚らずに嬌声をあげて、荒っぽくもある行為を受け入れている惟之に、和胤は興奮を抑えられない。からだを引き上げて四つん這いにさせるも、腕が震えて肘をついてしまう。余程ちからが入らぬのだろう。

 「はぁ…いけん…、も…ぅ」

 切なげに言って、和胤の一物を締めつけている内壁の収縮がはじまる。射精の頃合いは心得ているから、屹立している棹を掌で包んで緩く扱き、刺激を与えて吐精を促す。

 「う、んっ、ん…」

 程なくしてぶるっ、とからだを震わせ、和胤の掌中へ生温かい精を吐き出した。射精の瞬間にきつく和胤の棹を締め上げて、内壁の収縮がやわらぎ、包むようなうごきになる。それに煽られて和胤も射精感を高められ、蕩けるような体内から一物を引き抜いた。

 「ふ…ぅっ」

 自身の手で扱くと、惟之の精を絡めたままの掌へ射精を済ませ、指からつたう混ざり合ったそれを舐めとり、くちに含んで飲みこんだ。仰向けになったまま、ぴくりともうごかないが、惟之はその様子を恍惚とした表情で見上げて、まだからだが疼くのを感じた。強引に押さえこまれて貪られたが、こうして和胤のすがたを認めると、安堵を覚えるのも確かである。

 「まだ治まらんみとーですのう」

 寝具のうえで、無防備なすがたを晒している惟之を、どこか酷薄さが漂う笑みを浮かべて見おろす。射精したばかりだというのに、まだ屹立したままの一物を指しているのは明らかだ。

 「く…」

 上体を包むのは陸軍中将の軍服であるが、その裾から覗く素脚を、羞恥に堪えられずに閉じて縮める。からだを横向きにして庇うように丸めつつ、和胤を睨みつけた。

 「そがいに頬を染めて睨まれても、逆効果にしかならんですよ」

 寝台から降りながら言って、箪笥から晒しと手拭いを取り出して振り向く。惟之は先ほどの行為が堪えたのか、からだを起こしていない。すかさず近づいて組み敷き、火照った頬へ口づけた。

 「惟之さん、ほんに可愛えかったっちゃ…。あがいに受け入れて鳴かれちゃァ、堪らんちゅうものです。そそられていけん」

 いまの行為をさして、甘ったるい声で低く囁く和胤の言葉に、惟之は忽ち顔を真っ赤に染める。

 「う、うるさい…っ」

 薄い肩を掴まれて、仰向けにされるなり、手を振りあげる。それを和胤はものともせずに受けとめ、かるく手首を捻って戒める。

 「またこげなことを…。今日はおれの言うことを諾く、ちゅう約束じゃーなかったんですかのう」

 「諾くには諾く。そのまえに一発くらい、殴らせんかっ。我慢ならんのじゃ」

 耳まで赤くなりつつ、多分に熱を含んだ眼で睨みつける。あの倒錯した快楽が心身を侵食しつつも、かつてない興奮と快感を味わって悦びを得ていた。それが悔しくてならない。

 しかし和胤は涼しい顔で、獲物をいたぶる狼のような口ぶりで、“殴ってもええですが、そのかわり縛りあげて犯すも同然にしますよ”などと過激なことをさらりと言ってのけた。

 これにはさすがの惟之も“できるものならやってみろ”と売りことばに買いことば、というのは危険すぎると、踏みとどまる。睨み合うにしても、惟之のほうが完全に圧され、どこをどうとっても不利であった。
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| 変わらぬ青空のしたで・81―90話 | 07:11 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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