大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第弐拾壱話

 何の前置きもなく、いきなりの出入り禁止である。

 あまりに酷い―。と、おもってもひと言も返せぬまま、部屋から締め出されたかたちになって、嵩利は肩をおとして士官室へもどった。

 目に見えて意気消沈、朝を待ってガンルームに集った士官たちの中で、嵩利はひとり、そのような有様でいるから、ひどく目立つ。

 当然、勤務の時間になれば艦長と顔を合わせなければならない。憂いの浮いた顔などしたら、それこそ何を言い渡されるか。鷲頭のことだ、艦から放り出しさえしそうである。

 奇行こそあれども、嵩利は概ね好かれる性質である。気心知れた同期や、それに近い士官が心配して励ましにやってくる。朝食をとるころには、上官と対峙しても“勤務中の顔”を保てるところまで、何とか持って来ていた。

 そのころ艦長室では、従兵がいつものように鷲頭へ朝食を運んできていた。寝入ってしまったことをまだ愧じているのか、給仕をしながら、何か言いたげにしている。

 「あれは気にするな、昨日はよくやってくれた」

 食事が済んでから、茶を淹れている従兵をちら、と目をあげて見つつ、鷲頭はそれだけ言う。穏やかな声音に安心したのか、食器をさげて出てゆく際、多分に安堵を含んだ表情で一礼をしていった。

 軍規や不正におそろしく厳しい、と評判がたっていた艦長だけに、懲罰どころか進級停止も覚悟していた。それが、咎められるどころか労われ、一切何もなしである。

 このことはたちまち艦内―特に下士官、水兵の間に伝わり、驚嘆の声があがった。無愛想で冷たそうに見えて、実は部下思いの艦長なのでは、と何となく近寄りがたくて怖がっていた者たちも、従来の色眼鏡をすこしばかりずらして、鷲頭艦長をみてみようという気持ちになったらしい。

 そんな下士官たちの話は、やがて時をおかずしてガンルームにも届き、ことの真相を嵩利が知ったのは、昼になってからだった。かかわった者に訊いてみれば、艦長付の従兵は砲術学校出身で、機器類にも精しいため、昨日は機関の方へかりだされており、罐だの螺子だのと点検の手伝いをしていたというのだ。

 士官室での昼食後に、皆が寛いでいるなか、嵩利は顔から火が出そうなほどで、まさに、穴があったら入りたい、入りたいどころか穴を塞いで埋まりたい、という心境であった。

 とてもではないが、鷲頭に合わせる顔がない。だが午後は参謀長に付いて職務にあたることになっていて、その気になれば翌日まで会わぬままでいられるから、いっそ、そうしてしまおうときめた。

 心中で死ぬほど愧じいりつつも、おかげで何とか軍務をこなせたが、精神的に疲れきっており、夕食の味も定かでない。今日ばかりはいつもの健啖家が、鳴りをひそめた。

 士官室へ早々と引っ込んで寝台へ潜ったが、どうにも寝付けず、ユニホームへ着替えて、夜半前に甲板へ出ていった。大湊へ向かう艦は、潮に揺られてゆったりローリングしており、そとへ出るのには、すこし危険な感じがする。

 それでも嵩利は出ていった。冴え冴えとした晩秋の空には、星がかかっており、艦橋のうえでも砲塔のうえでもいい、空と海を近くで見たかったからだ。

 不意に―艦が反対舷へ傾いたとき、前甲板を波がざッと洗っていった。眼下にそれを見て嵩利はヒヤリとしつつ、とっさに索具と手すりにつかまって支える。もうすこし強く傾いていたら、危なかったかもしれない。

 海図室には、まだ二人の士官が詰めていて、そこへすこし顔をだしてから、艦橋へあがっていった。測距儀のまえに腰をおろすと、膝をかかえて暗い海と星空をながめる。故郷へ繋がるその光景に、ほんのすこし心が休まるような気がした。

 それに、こうして手の届かぬ広大な存在というのは、見ていると圧倒されるし、自身の矮小さがつくづく身にしみてくるものだ。今朝方にくだらぬ嫉妬にかられて、上官に叱られたことも、素直に深々と省みることができる。

 半刻を過ぎても降りてくるようすがないのを、海図室に居た士官が心配になって、ラッダーの中ほどまで、様子を見に足音を忍ばせて登ってきた。

 その気配はおろか、うしろから様子を見られているのにも気づかず、嵩利は愁いに沈んだ横顔を星あかりに晒している。士官は嵩利が艦長の副官で、磐手の“名士”であることも知っていた。

 だが、いまは名士ぶったところなど微塵もなく、その端整な横顔にどこかあやうさを感じて、何も声をかけずに、海図を巻いて急いで中甲板へ降りていった。

 ちょうど航海長は艦長の公室に招ばれて、寛ぎながら航海士からの報告を待っていた。候補生から少尉になりたての士官たちを鍛えるため、横須賀を出航した磐手だが、北方海域での警備が、その最初の任務となる。

 端然と報告をし終えた士官へ、ふたりの上官は何度かちいさく頷いてみせる。今回の新任少尉が、なかなか良い出だしだということを物語っていた。やがて航海長と共に、艦長公室を辞そうとしたときになって士官は、千早大尉の様子がおかしいのです、とそっと告げた。

 ―あの馬鹿者が。

 とっさにこみ上げたのは怒りで、ふたりが辞していったあと、俄かに心配になってきた。鷲頭は眉間を険しくして内心で吐き捨てたが、心配を押し隠して知らぬ顔をするつもりはなかった。

 波がたかくなり始めているときに、まだ甲板へあがったままというのは危険すぎる。どういうつもりで艦橋へ行ったのかわからないが、とにかく連れ戻さねば―。

 公室の扉を閉めて廊下を歩き出すと、少しさきのラッダーから靴音がきこえて、鷲頭は立ち止まって降りてくるのを待った。副官かとおもったが、先刻報告に来た士官と居た、もうひとりの航海士だろう。交替だったらしく、鷲頭を認めるなり、さっと挙手の礼をして、居住区へおりていった。

 上甲板へあがると、思いのほかうねりが強いのを感じる。が、舵のとり方は的確である。これ以上荒れたら、指示を出しにゆくべきだろうが、今はまだ心配ない。

 艦はかわらず大きく揺れている。向かって反対舷のほうに黒い人影がみえて、鷲頭はそちらへ回りこんだ。手すりへつかまりつつ歩を進めると、星あかりに浮かぶしなやかな体躯を認め、それが副官だとわかる。

 さすがに海で育っただけに、ちっとも危なっかしい足どりではなかったが、この揺れが何をもたらすかわからない。鷲頭は距離が詰まるのをもどかしく待ち、副官を後甲板の安全な場所へ引っぱりこむなり、きつく腕を掴んで詰め寄った。

 見上げてくる副官の眼には、反抗のいろも、鬱然としたいろもない。今朝あった傲慢さがすっかり消えている。いつもの、鷲頭が愛しているかれがそこにいた。それで、叱る気が失せた。かれはかれなりに、己を見つめる場所を求めたくて、海をながめに外へ出たに違いなかったからだ。

 「分かったか?」

 「はい」

 「よし、それなら出入りを許す」

 艦が揺れるにつれて、からだが傾ぐ。鷲頭は慣性にまかせる風を装い、揺れに乗じて副官の腰へ腕を回して抱きとめる。そのからだは、夜の潮風に晒されてすっかり冷え切っていた。
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| 綿津見の波の色は・21―30話 | 03:21 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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  綿津見の波の色は・第弐拾弐話

 数日して大湊に着くと、ガンルームの士官たちは分隊についていって、それぞれ警護や海上の勤務についていったが、艦長その他の者は司令部での陸上勤務になった。

 嵩利も上官にくっついて、連絡や補佐などに走りまわった。南樺太を割譲されて以来、権益を保護するための海防は重要であるから、帝都の赤煉瓦よりある意味多忙である。

 軍務とはいえ、当然休日はあるわけで、金曜の夕ごろともなると、赤煉瓦の司令部も、警備につく艦上も俄かに活気づいてくる。

 街へ繰り出してゆく士官たちを横目に見つつ、鷲頭は副官を連れて、小ぢんまりした待合のような、瀟洒な日本家屋へ“神隠れ”した。


 海上、陸上を問わず、勤務に就いているときは嵩利に一切触れなかっただけに、こうして対峙すると妙に落ち着かなかった。しかも、白と紅の絹の寝具が次の間に支度されており、ほそく開いた襖から窺える。

 これだけ間が空くと、向かい合って酒を酌み交わしているだけでも、緊張してしまう。いまはふたりともユニホームを脱いで、鷲頭は洋装の平服、嵩利は袷に羽織と袴をつけている。

 杯を干しつつ、時折鷲頭の顔へ視線を向けるが、上官は別に普段と変わりない。態とそうしているのか、全く読めないあたり、妙にくやしい。

 しかも上官と比べたら、飲める酒の量などたかが知れているから、一刻も過ぎるともう杯を伏せてしまって、少し飲みすぎました、と言って、次の間に引っ込んでいった。

 寝具とおもっていた紅色の絹地は、銀糸金糸鮮やかな刺繍で縫い取りがされた振袖が、広げて掛けられているだけだった。かいまきでもあるまいし、こんな高価そうな着物を、衣桁へ掛けないでおくのはどうなのだろう。質素な部屋だけに、殺風景なものになるのを配慮して、気を利かせたのだろうか。それとも―。

 ―まさか、着せるつもりだったりしないだろうナァ。

 酔っているのも手伝って悪戯心が擽られ、上官の意図が有るにしろ無いにしろ、袖を通す気になって、脱いだ羽織の代わりにしてみると、ちょうど打掛のようになる。

 幼い頃、年の離れた姉から少女の頃の着物を、ふざけて着せられたおぼえがある。別に嫌がりもせず、むしろ面白がったものだった。

 ついでに袴も袷も脱いできれいに畳み、淡色の襦袢だけを肌につけ、振袖を纏いなおす。寝具のうえに身を横たえて、絹の感触を指でなぞってみる。

 「千早くん…」

 なかなか座へ戻ってこないのを、酔い潰れたかと心配になって覗いてみれば、太夫も顔負けの媚態をみせて横臥している。裾が膝のうえまで捲れて、日焼けした、しなやかな脚が紅の着物から伸びていた。

 「久しぶりに酒飲ンだら、酔っちゃいました」

 「きみは、酔うと女装する癖があったのか?」

 「さァ…、どうでしょうね」

 幼少の頃にあったことを、逐一説明するのも億劫で、嵩利は艶っぽい笑みを含ませて言った。寝具のそばへ膝をついて、まじまじと見つめてくる鷲頭のまなざしが、驚きのほかに、多分に飢えたような色を含んでいる。

 「これは恐れ入ったな…」

 あまりのすがたに嘆息混じりに呟くと、副官は酔っているのか、いつもの羞恥が薄れているらしく、目の縁を赤くしてこちらを見ている。

 そのまま這い寄って、からだへ覆い被さった。膝を掴んで開かせ、腿へ滑らせて股間をまさぐる。下帯をつけていないのと、一物が反応を見せ、棹がかたくなり始めているのを認めて耳許へ囁いた。

 「このまま抱いてもいいが…その格好で、自ら慰めているすがたを、是非とも鑑賞してみたいものだな」

 「―っ、艦長…ッ!」

 二人きりになると、普段では想像もつかぬようなことを言い出す。鷲頭の貪淫さは、嵩利の手に負えるものではなく、そのうち引きずりこまれて、その味を覚えるのも遠くはないだろう、と薄々おもっている。

 「きみが、いつもどのようにしているのか、観ているから、してみ給え」

 低く囁きながら鷲頭の手が、嵩利の手を取って股間へ導く。酔いと倒錯に浮かされて、羞じいりつつも棹に指を絡めて、そろそろと撫でていくのを、鷲頭はじっとみつめる。

 正直に言って行為の最中―前戯であっても、例えば、甘い毒を含んだことばを、耳に流し込まれるより、こうして見られているほうが、よほど羞恥をおぼえる。

 不器用な鷲頭ゆえに、目は口ほどにものを言うというのがぴったりで、愛撫を施されるまえに視姦され、初めて抱かれたときに感じてしまってからというもの、上官の、多分にきつさがある目許が熱っぽくなってくると、嵩利にとっては何よりその視線が堪らない。

 絹布団のうえで、着崩れた襦袢と振袖を肌へ纏いつかせて、鷲頭の前で脚を開いたまま晒した一物を弄り続けている。手つきが次第に貪欲なものに変わり、雁首から透明な液が滲むと、嵩利はもうそれだけでからだを震わせた。

 「か…艦長、いつまで…続ければ良いのですか…このままなんて、嫌…です。触れてください…」

 目の前で泰然と胡坐をかいて座っている鷲頭は、副官の懇願に口許を僅かにほころばせた。

 副官は根もとを扱きあげる手を止めずにいる。留守になっている雁首へ手を伸ばし、指さきで割れ目を抉るとすぐに、熱い先走りが零れてくる。

 「あ…ッ、駄目…そんなに、弄らないで…」

 「意図は明確にせよ、と言っている筈だが…まあいいだろう」

 そっと手を掴みあげて、自慰行為をやめさせる。開かれた脚の間で屹立したまま放置された一物は、煽られた余韻にびくっびくっ、と棹が小刻みに跳ねている。

 泰然とした姿勢を崩して隣へ寝そべり、緋を纏った艶かしい肌を指と舌で丹念に愛でて、首すじから臍まで下ろしてゆき、遂にはその一物へ唇をつけ、雁首へ舌を絡めると、滴るような水音をたてて口淫をはじめる。

 男のそれなど咥えたこともなければ、咥えられたこともあるまい。この行為は、快楽を与えるのと、からだへ覚えこませるのと、両方の意図を持っていた。
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| 綿津見の波の色は・21―30話 | 00:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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  綿津見の波の色は・第弐拾参話

 未だ数回しか抱かれていないというのに、鷲頭が与える快楽は、生かさず殺さず、という表現は間違っているかもしれないが―ともかく、嵩利からしてみれば、からだを知り尽くされたかのようである。鋭敏な性質だけに、逐一反応を示してしまうのが羞ずかしく、かといって隠すだの強がるだの、そういった器用な真似はできない。

 「あァ…ッ、駄目です、そこは―」

 悲鳴に似た声をあげて、上体を捩った。腰から臀へ吸いつくように掌を沿わせて撫でられ、後孔へ指さきをほんの少し挿し入れられただけで、ぞくぞくと震えがはしる。それは敏感に一物へ伝わり、このままではいつ吐精してしまうかわからない。嵩利は慌てた。自身の棹を、鷲頭が咥えたままでいるのだから。

 「ん…ぅっ…、やっ、出ちゃう…」

 挿し入れた指で内壁を撫でられ、棹を舐める丹念な舌遣いも止まない。両方を攻められて、嵩利が堪えきれるはずがない。

 だが、感じ易くすぐに達してしまうのを、鷲頭は絶妙な頃合いを計って、それをとどめている。こうして長引かせることで、段々と耐性のようなものが身についてくるのだ。瀬戸際まで追い詰めなくてもいいのだが、どうにも反応が愛らしくて、ついやり過ぎてしまう。

 ともかく、前戯からしてこの有様なのだ。せめて四半刻は持つようにせねば、鷲頭としても楽しみ甲斐がないし、そう何度も吐精させるのは、からだによろしくない。

 それでも初めのときと比べたら、成長していると言っていいだろう。後孔へ挿しいれた指を、収縮した内壁が締めつけて、限界の近さを告げていた。ゆっくりと指を抜いて、鷲頭は施していた口淫を止めぬまま、雁首を舌先でくじって射精を促す。

 「あぁっ」

 とうとう堪えられえず、上官の口腔へ精液を吐き出してしまう。嵩利はどうにも申し訳ない気持ちになって、はしたないからだを羞じた。まだ酒に酔ってもいたし、熱に浮いたままでいたが、悲しげな顔で上官を見あげる。

 「すみません、艦長」

 からだを起こして唇を指で拭いつつ、そのことばを聞く。まったくしおらしい素直な態度で、可愛くてしようがない。副官を咎める気など全くないが、こうしてみていると妙に虐めたいという気持ちが、顔を出す。

 「何を謝る必要があるか、身を委ねろと言ったのは私だぞ」

 いったい何の不服があるのだ、と言わんばかりの眼つきで、じろっと睨めつけて言う。それは九割演じてみせただけであるのだが、副官はすこし怖じたようにからだを縮めて、また緋色の陰に隠れようとしてしまう。先刻みせた艶のある態度はなく、いつもの顔である。似つかわしくないものを装ってみても、ほんの飾りにしかならない。

 これでいて鷲頭は、副官の純粋さを毀さぬよう腐心しているのだが、ともするとこういった態度に疼きをおぼえる。

 「でも…、ぼく―」

 「きみはそのままで居ればいいのだ」

 酔った勢いで閨に入って、あまつさえ先に誘うような素振りをみせておいて、この体たらくである。と、少なくとも嵩利は、上官に肩すかしを食わせた気持ちでいる。

 ふざけてこんなことしなけりゃ良かったナ、と、しょげ切ってしまい、紅鮮やかな絹の殻を捨てようと、袖を脱ぎかけたところを止められる。

 「いいから着てい給え、なかなかに可愛らしくてよい…。こら、そう落ち込んだ顔をするな」

 やさしい甘さを含んだ声で囁かれ、いっぺんに後ろめたさが吹き飛ぶ。上官がこんな声音で話すのは、嵩利に対してだけなのだ。それだけは疑いようがない。

 腕をとられて身を起こすと、すかさず抱きすくめられる。絹越しに肌をさぐられて、艶めいた感触だけでからだが震えてしまう。何もかも包みこんでくれる上官へ、もっと甘えたいという気持ちがあるものの、勝手がわからないうえに、この体質が災いしてどんな痴態を晒してしまうか、それが怖かった。

 だが嫌われるのを恐れて、いつまでもこうしていては、飽きられてしまうか、不甲斐ない奴だと思われてしまうかもしれない。

 「艦長」

 ひとしきりからだを探って、その手がとまると嵩利は恐る恐る手を伸ばして、上官の精悍な頬に触れた。指さきで撫でながら包むと、その唇をほんの軽く啄ばんでみせた。

 甘えたいという気持ちと、鷲頭に対するおもいが混ざって、どうしても示したかった。手馴れているとは言い難く、しかも上官に対してである。恐る恐るであったが、せずにおれなかった。

 唇に触れたあと、すぐに離れようとしないで、まだ掌で頬を包んでいる。削がれたような輪郭を指さきで撫で、ぴんとした耳の縁にも触れてみる。

 「もう、しないのか?」

 促されて、もう一度求めると今度は鷲頭も応えてくれる。唇を食みあうような柔らかい接吻が続いて、嵩利は心が満たされてゆくのを感じていた。それは鷲頭も同様で、こうして、少しずつ応えてくる副官が愛しくてならない。

 さしあたっては、この程度の触れあいでいいらしい。というのも、唇を離して視線を絡めた途端、のぼせたように赤面して顔を伏せてしまったからで。その癖、しっかりと抱きついて離れようとしていない。

 「そうか、勝手がわからずに我慢していたのか。したければ、いつでもしなさい。身を委ねろと言ったが、何もするなという意味ではない。きみをいいようにしたい訳ではないのだから、遠慮はするな」

 「はい…」

 例の声音で諭され、尚且つ上官のやんわりとした抱擁をうけて、嵩利は胸が高鳴って痛いほどだった。
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| 綿津見の波の色は・21―30話 | 15:03 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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  綿津見の波の色は・第弐拾肆話

 抱きついている鷲頭のからだを包んでいるのは、目立たぬ平服とはいえ上品な仕立ての洋装で、無駄なところがないのは本人の趣向なのだろう。嵩利はつらつらとそんなことを考えつつ、胸へ頬をつけて甘えかかる。

 「このままでいるのも悪くないものだな」

 短く剪った髪を撫でる手つきに、うっとりと目を細めていたら、不意に鷲頭が耳もとへ囁きかけてきた。徒にからだを求めるのではなく、こうして婉曲ともとれる手段でかれの意識と欲望を刺激してみる。

 「ん…」

 横座りになっていた嵩利の半身は、胡坐をかいた上官の脚にくっついている。片方の臀に、そこはかとなく鷲頭の股間の感触があたっていて、硬さを持っているのがわかる。

 弄られた一物がまだ半勃ちのままで、後孔も僅かながら疼いてもいたから、上官の股間を意識した途端、快楽に飢えている自身を羞じつつも、艦長ずるい、と不貞腐れたように呟いてしまう。

 中途半端に昂ぶった状態で、欲求不満のままずっとこうして甘い時間を貪るのは、さすがに耐えられない。腕を解いて少しの間対峙して顔を見合わせるも、いつもの渋みのある静かな表情でみつめられる。嵩利の胸のうちをどう察しているのか、読み取れない。

 ―もう、何を考えているのかわかんねーべな。

 接吻を受けてくれたこともあるし、いつもと違う様子でいる上官が、急に身近な存在として浮きあがってきている。両掌を胸に添えていたのを、ぐっと押しつつ体重をかけると、ぐらりと上体が傾ぐ。そのまま鷲頭を絹の寝具へ押し倒した。

 「弄っておいて、このままなんて酷い」

 「私を襲うつもりか?」

 「襲うなんて…そんなこと、できません。ただ、その…何でもないときにああして甘えるのならいいけど、今は嫌です」

 「なるほど。そうだな…こうしてきみに誘われるのも中々、そそられるものがある」

 そうして覆い被さってみても、仔猫が獅子にじゃれついているようなものであったが、嵩利はまず上官の身を包む洋装へ手を伸ばして、ひとつずつ剥ぎ取りにかかった。タイを解いて、シャツとベストの釦をすべて外してしまう。そのしたに現れる逞しいからだを、余さず撫でて、唇で啄ばんでいった。

 その健気とも言える愛撫に、鷲頭は大いに満足していた。行為そのものよりも、副官が積極的な態度をとっていることが、大きな喜びである。少なくとも私人でいる間は、遠慮会釈なしに接してほしい。鷲頭に対する副官の明るさ、素直さは、あの海辺の故郷にいたときほど、まだ発揮されていない。

 濃灰色のズボンのうえから、股間をさぐってみると、確かに先刻より反応をみせていた。前を寛がせて下着のなかから棹を探りだし、手淫を施してゆく。

 「艦長…っ、ん…」

 その間に鷲頭も少しずつ副官のからだに触れて、その熱を高めさせることに余念がない。両手で臀を撫でて掴み、ゆっくり揉んで刺激を与える。

 「あ、ぁん…っ」

 扱いていた手が止まり、腰をくねらせてからだを震わせた。手淫がおざなりになるのも構わず、後孔を指でなぞってなかへ沈めると、欲して疼いているのがわかる。その感触に、鷲頭の一物も怒張しきって昂ぶりが増してゆく。

 「今夜は私のうえで咲いてもらおうか、千早くん」

 「あ…そんな、艦長…っ」

 悶えつつ喘ぐ副官を抱きすくめて囁き、臀のあいだに棹を押し当てて擦りつける。敢えて組み敷かず、自身に跨らせたかっこうで後孔へ亀頭を潜りこませた。したから突きあげるようにして、内壁を抉って最奥まで一物をおさめると、その衝撃に副官の唇から嬌声があがった。

 体内を侵食している鷲頭の一物は、分泌される体液を絡めて貪欲に嵩利を貪った。腰を掴まれて促され、なまめいた動きをはじめると、恍惚とした表情を隠さずに背を反らせて、声を憚らずにあげている。緋色の絹地が揺れ、日焼けした肌が垣間見える様が、淫靡さに色を添えて、そこに“咲いて”いる。

 副官のからだが驚くほど具合がよいのは、初めて抱いたときに感じていた。

 男を受け入れたときの吸いつく度合いと、締めつけてくる強さも、与える快感に的確に応えてくる。それが淫乱な体質だとか、鷲頭はそのような下卑た目で見ることはない。

 上官に跨って、ぎこちないながらも嵩利は欲求のままにそれなりの腰遣いをみせて、猛る一物を咥えこんでいた。与えられ、貪る快楽は臀から腰を疼かせて脊髄をつたい、脳内にある理性を確実に溶かしてゆく。

 しかし羞恥は拭いきれず、あられもないすがたでいる自身を羞じて、上官はいったいこんなぼくを見て、どうおもっているのだろう、と頭の片隅でちらりと考えもした。しかし鷲頭は嵩利へ熱いまなざしを向けて、攻めたてる腰遣いを緩めていない。

 秘め事の濃密さは、嵩利に想像以上の酔いをもたらしている。普段の軍務に際して、まったくの狎れを許さないことは、鷲頭の信条であるのを理解しているが、それが否応なしにふたりきりの時間を引き立てる。

 不器用だから、と言う上官はことばこそ少ないが、それがますます嵩利を煽りたてる。その癖、どこまでもやさしく包んでくれるのだから、今や口癖のようになっている“艦長、ずるい”とおもわざるを得ない。
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| 綿津見の波の色は・21―30話 | 19:45 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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  綿津見の波の色は・第弐拾伍話

 密室で咲いた妖艶な花の甘い香りに酔い、不覚にも鷲頭は興奮を抑えきれず、蜜を貪り尽くした。情事に耽ったあと、嵩利は途切れがちになる意識を繋ぎとめ、ゆっくり息を吐いたあと鷲頭へ身を投げかけて、まさに精根尽きたという態である。

 体内に吐き出された精液で内壁は熱く濡れて蠢き、なかをいっぱいに満たしていた一物が抜かれると、収縮を繰り返して疼きだけが残る。

 「う…ン」

 甘やかな声がして見てみれば、副官はすっかり恍惚とした表情で鷲頭へ凭れかかっている。あたまを撫でてやると心地よさそうに吐息を漏らす。

 「すまないな、千早くん…」

 散々攻めたてた印に、そのからだから力が抜けきっている。毀れ物を扱うように、鷲頭は備えてある着物を引っ掛けてから、なかば夢心地でいる副官を抱きあげて浴室へ連れてゆく。旅館にしつらえてあるような、木造りの広い浴室である。

 幼子にするように、何から何までしてやり、きれいにからだを洗って湯につからせた。ここは北の地であるし、晩秋の夜だけに寒さがつよい。きちんと温まらねば、感冒に罹りかねない。

 湯へ入っているうちに、涼しげな風が細く開けた硝子窓から吹いてきて、紅潮した頬を撫でる。すこしずつ意識がはっきりしてくるにつれて、上官の逞しい背を見つつ、嵩利の世話好きがあたまを擡げた。

 湯舟の縁に寄って肘をつくと、まだ湯からあがる素振りをみせたわけでもないのに、上官はこちらに窘めるまなざしを向けてくる。

 「こら、肩までちゃァんとつかっちょれ」

 と、まるでこどもを叱るように言うのに対して、嵩利はくちを尖らせてみせる。

 「背中流すくらい、させてくれたっていいのに」

 「せんでええから、温まっていなさい」

 手桶をとって湯を掛けてからだを流しながら、鷲頭はぷいと横を向いてぶすッとした口調で言う。いまの嵩利には、それが上官の照れ隠しとわかっているから、途端ににんまりして縁から離れた。

 湯へはいって隣へ座ると、上官は黙ったまま手を伸ばして、ぞんざいに嵩利のあたまを撫でてから、湯のなかで腰を抱き寄せる。ぴったり寄り添って、暫し時が経つ。

 「気持ち良かったけど…ちょっと怖かったナ…」

 ふいに嵩利は、ぽつんと言って胸へ頬をくっつけた。別段責めるつもりがないことは、甘えかかる仕草でわかる。鷲頭は何か答えようとしたが、結局ことばを飲みこんで、ぎゅっとからだを抱きすくめた。

 よく温まって寝衣に着替えてから部屋へ戻る。綿入りの羽織を着こんで一献傾けたあと、嵩利は上官にひとつ我が侭を言って、ひざ枕を強請ってみる。火鉢のそばで膝を貸してもらい、嬉々として身を横たえた。その頬や髪を撫でつつも、耳朶や首すじを擽ることも忘れない。

 五徳にかけた鉄瓶がたてる、ちりちりという音以外に何も物音がしない。見つめあいながら、時々指を絡めたり、嵩利も手を伸ばして、鷲頭の頬を撫でたりしている。

 「ぼく…失神するかとおもいました。覚えているだけで三度くらい…、もうすこしお手柔らかにしてくださらないと、困ります」

 「うむ…あれは私の不覚だった。気をつけんといかんんな」

 と重い口調で言いつつも、頬を撫でる副官の手を取って、指の間や指さきへ口づけている。厳粛な上官も、まったくこういう時の返事だけは、当てにならない。まだ貪り足りないというのか、襟の隙間へ手を差し入れて胸をさぐりだす始末である。

 「…んっ、か、艦長っ!」

 嵩利も、遣りこめられてばかりではいられない。胸を這う指の動きが怪しくなってくる前に、膝枕から離れて転がり、畳のうえで丸くなる。毛を逆立てた猫よろしく、睨みつけてくる副官の訴えを、鷲頭は面白そうに目許を笑ませただけで受け流す。

 「何だ、もういいのか」

 泰然と構えたままで、ここへ来いというように上官は膝を叩いてみせるが、嵩利は頬を膨らませてそっぽを向くと、もう眠ります、半ばいじけ気味に呟いて次の間へ姿を消した。

 ぴしゃりと閉ざされた襖を横目に、口の端に笑みを浮かべる。燗をした徳利を取り上げて、手酌をしつつ杯を重ねてゆく。弄んでいるつもりはないが、羞じながらも怒る顔をみると、ついつい虐めたくなってしまう。
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| 綿津見の波の色は・21―30話 | 14:35 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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